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💪|【トレーナー直伝】筋トレ後に“コーラ”を飲むといい理由とは…!?


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【トレーナー直伝】筋トレ後に“コーラ”を飲むといい理由とは…!?

 
内容をざっくり書くと
ボディメイクを効率よく行うには、トレーニングだけでなく食べる物も重要でしょう。
 

普段から筋トレをしている方の中には、さらに筋肉を大きくしたいと思って、食べるものにも気を遣っている人… →このまま続きを読む

 READY

まだまだ頑張りたいと考える40代男性に向けて、彼らの日常生活にプラスオンしてもらえる「新習慣」を提案していきます。仕事や家庭においても背負うものが多くある40代男性が、習慣の連続性のなかで充実したライフスタイルをおくる一助となるべく、様々な情報を発信してまいります。


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痩身

痩身(そうしん)とは、痩せた身体[1](または引き締まった身体)のこと、そのような身体にすることである。また、そのような身体にすることの意味で「減量」という言葉が用いられることがある。「痩身」と「減量」、いずれも同じニュアンスで用いられやすい。

厳密に言えば「痩身と減量」は同義ではない。「減量」は、総体重に着目した概念である。身体から脂肪が減って筋肉量が増えると、体重は増えるが身体は引き締まる。

痩身や減量を行うには、内分泌学代謝栄養生化学に関する知識を身に付ける必要がある。

カロリー理論

身体が1日に消費するエネルギー量は、その人の体格や運動量によってひとりひとり異なっており[2]、その量は《基礎代謝量》と《身体活動レベル》を用いて概算できる[2]

自分の《基礎代謝量》に関しては「基礎代謝」を参照。

《身体活動レベル》については、次の表の右側を見て、左側から該当の数値を見つける。

身体活動レベル[2]
活動
レベル
身体活動
レベル
生活パターン
低い1.50生活の大部分で座っており(=座位)、(静的な活動が中心の場合
普通1.75座位中心の生活だが、仕事で立ったりすることもあり、あるいは通勤買い物家事、軽いスポーツをすることが含まれる場合
高い2.00仕事で移動することや立っていることが多い場合。あるいは日常的にスポーツや活発な活動を行う習慣がある場合。

次の式が成り立つ。

一日の基礎代謝量(kcal) × 身体活動レベル = 一日に消費されるカロリー

例えば年齢が30代で基礎代謝量が1,140kcalの女性で、通勤してデスクワーク中心の仕事をしている人(=身体活動レベルが普通、つまり数値が1.75)の女性ならば

一日に身体が消費するカロリーは、1,140(kcal) x 1.75 = 1995(kcal) となる。

口から入るカロリー < 身体が消費するカロリー

この不等式を成立させるためのポイントは「食事の制限」と「運動の実行」である。左辺を小さくするために「食事の制限」を行い、右辺を大きくするために「運動を実行」する。

  • 食事の制限:ビタミンやミネラルは摂取し食品のバランスは保ち健康に配慮しつつ、総カロリーを抑える食事制限(ダイエット)を行い、口から入るカロリーを制限する。
  • 運動の実行:運動(散歩、家事、身体を使った仕事、エクササイズ、筋力トレーニング 等々等々)を実行することによって消費カロリーを増やす。


と、されるが、実際のところ、このカロリー理論には何の根拠も無い。後述のとおり、「『食べる量を減らして運動量を増やす』は、「体重を減らす」という点においても、「病気を防ぐ」という点においても、「何の効果も無い」という結果が次々に出ている。

「カロリー」を体重の増減に絡めて初めて提唱したのはドイツ人の内科医カール・フォン・ノールデン(Carl von Noorden)であり、彼が1907年英語で発表した『Metabolism and Practical Medicine』(『代謝と実践医療』)の第3章『Obesity』(『肥満』)の中で、

The ingestion of a quantity of food greater than that required by the body leads to an accumulation of fat, and to obesity should the disproportion continued over a considerable period.」(「身体が必要としている以上の量の食べ物を摂取することが脂肪の蓄積をもたらし、その不均衡が長期に亘って続くと、肥満になるはずである」)

と記述している[3]。その後、このノールデンの主張は、体重を制御する方法やダイエットについて伝授する人間がほぼ必ずと言っていいほど口にするようになった。ノールデンによるこの著作物は、インターネットでも読むことが可能。

「ヒトは消費する以上に多くのカロリーを摂取するから太るのである」という考え方を概念や理論として広めた人物の元祖はノールデンということになる。

肥満と減食・運動

カール・フォン・ノールデンによるカロリー理論

「痩身や減量というのは、食事制限や運動をせずして成功しない」[4]と言われることが多い。「食べる量を減らして運動しろ」ということであるが、実際には、この言い分には何の根拠も無い。後述のとおり、「『食べる量を減らして運動量を増やす』は、『体重を減らす』という点においても、『病気を防ぐ』という点においても、『何の効果も無い』」という結果が次々に出ている。

「カロリー」を体重の増減に絡めて初めて提唱したのはドイツ人の内科医カール・フォン・ノールデン(Carl von Noorden)であり、彼が1907年英語で発表した『Metabolism and Practical Medicine』(『代謝と実践医療』)の第3章『Obesity』(『肥満』)の中で、

The ingestion of a quantity of food greater than that required by the body leads to an accumulation of fat, and to obesity should the disproportion continued over a considerable period.」(「身体が必要としている以上の量の食べ物を摂取することが脂肪の蓄積をもたらし、その不均衡が長期に亘って続くと、肥満になるはずである」)

と記述している[3]。その後、このノールデンの主張は、体重を制御する方法やダイエットについて伝授する人間がほぼ必ずと言っていいほど口にするようになった。

「ヒトは消費する以上に多くのカロリーを摂取するから太るのである」という考え方を概念や理論として広めた人物の元祖はノールデンということになる。

ノールデンが唱えたカロリー理論に基づく形で、1日の適正カロリーに対してほんの2%だけ余剰にカロリーを摂取し、それを10年間続けると、25kgの体重増加につながる[5]とされる。

食べる量を減らすと代謝は悪化する

カロリー理論に基づく「食べる量を減らして運動量をもっと増やす」に忠実に従ってきた結果、肥満や糖尿病を患う人々は増え続けている。肥満が蔓延している点について、カロリー理論では満足のいく説明が提供されないままであり、カロリー理論には説得力が無い[6]

食べる量を減らすと、空腹感が強まり、身体はエネルギーの消費を減らそうとし、代謝は悪化し、体重は減少しなくなる[6]。食べる量を減らすと、動物はエネルギーの浪費を抑えようとして身体を動かすのを止める。身体を動かすのに必要なエネルギーが入ってこないからである。身体がエネルギー不足に陥ると、過食に走るか、エネルギーの消費を減らそうとして動かなくなるか、あるいはその両方の行動に出る。そして、体重は、食べる量を減らされる前よりも大幅に増加し、肥満になる[7]

カロリー制限は、まず失敗に終わる運命にある。摂取カロリーを抑えた食事や低脂肪な食事は代謝を悪化させ、空腹感をますます強め、ストレスホルモン(コルチゾール)の上昇に伴う飢餓反応を惹き起こす[6]

1941年、ウイーン大学の教授で肥満の研究家、ユリウス・バウアー(Julius Bauer)は以下の記述を残している。

「現在流布している肥満理論は、食物の摂取とエネルギー消費の間の不均衡しか考慮しておらず、不十分である・・・エネルギーの摂取と消費の不均衡における食欲の増加は肥満の原因ではなく、脂肪組織が異常を惹き起こした結果である」[8]

運動すればするほど太る

肥満患者を治療する臨床医の多くは、1960年代までは、「運動すれば減量できる」「座りっぱなしの生活をしていると太る」「食べ過ぎるから太る」といった考え方を「幼稚」として退けていた。ミネソタ州ロチェスター市にあるメイヨー・クリニック(Mayo Clinic)の医師、ラッセル・ワイルダー(Russell Wilder, 1885-1959)もその1人である。1932年、肥満についての講演を行った際に、ワイルダーは以下のように述べている。

「肥満患者は、ベッドの上で安静にしていることで、より早く体重を減らせる。一方で、激しい身体活動は減量の速度を低下させる」「運動を続ければ続けるほどより多くの脂肪が消費されるはずであり、減量もそれに比例するはずだ、という患者の理屈は一見正しいように見えるが、体重計が何の進歩も示していないのを見て、患者は落胆する」[7]

ラッセル・ワイルダーのこの主張は、カール・フォン・ノールデンが唱えたカロリー理論を全否定するものである。

ケトン食

ワイルダーはメイヨー・クリニックにて、主に糖尿病患者を担当していたが、糖尿病だけではなく、肥満の治療にも関心が高かった。1920年代前半、ワイルダーは『ケトン食』を開発し、肥満患者・糖尿病患者にこれを処方している。これは食事において、「摂取エネルギーの90%を脂肪から、6%をタンパク質から摂取し、炭水化物の摂取は可能な限り抑える」(極度の高脂肪・極度の低糖質な食事)というもの[9]。元々は癲癇を治療するための食事法であったが、「肥満や糖尿病に対しても有効な食事法になりうる」としてワイルダーは開発した。炭水化物とタンパク質の摂取は可能な限り抑え、大量の脂肪分を摂取することで、身体は脂肪を分解して作り出す「ケトン体」(keto)をエネルギー源にして生存できる体質となる。この食事法は『ケトジェニック・ダイエット』(The Ketogenic Diet)として知られるようになる。『アトキンス・ダイエット』を提唱したロバート・アトキンスも、著書『Dr. Atkins' Diet Revolution』の中でケトン体について触れており、「炭水化物の摂取を極力抑え、脂肪の摂取量を増やすことで、身体はブドウ糖ではなく、脂肪をエネルギー源にして生存できる」という趣旨を述べ、体重を減らしたい人に向けて、炭水化物を避けるか、その摂取制限を奨めている。

なお、ケトン食を摂取し続けることで、身体は炭水化物ではなくケトン体を常に燃料にする体質となり、肥満や過体重の場合、体重、中性脂肪、血糖値が有意に低下し、心臓病を起こす確率が低下する[10]。低脂肪食と比較して、ケトン食は肥満患者や糖尿病患者の体重を大幅に減らし、血糖値とインスリン感受性を改善させ、代謝機能障害に関係する死亡率も低下させる可能性がある[11]

ケトン食はミトコンドリアの機能と血糖値を改善し、酸化ストレスを減少させ、糖尿病性心筋症(Diabetic Cardiomyopathy)から身体を保護する作用がある[12]

また、ケトン食は記憶力の改善と死亡率の低下をもたらし[13]、末梢軸索(Peripheral Axons)と感覚機能障害(Sensory Dysfunction)を回復させ、糖尿病の合併症も防げる可能性が出てくる[14]

減食と運動は無意味

1990年代初期、アメリカ国立衛生研究所(The National Institutes of Health)は、『The Women's Health Initiative』(『女性の健康構想』)と題した、約10億ドルに及ぶ研究を行った[15][16]。このとき、「低脂肪の食事で心臓病や癌を本当に予防できるか」という研究も同時に行われた。5万人近くの女性を登録し、そのうち19541人を無作為に選んだ。研究は1993年に開始し、8年間続けられた。研究者たちは、参加した女性たちに対し、果物・野菜・全粒穀物・食物繊維が豊富なもの・脂肪が少ないもの・・・これらを優先的に食べるよう指示した。この食事を続けるにあたり、女性たちは定期的にカウンセリングを受けた[17]。脂肪の摂取量については、摂取カロリーのうちの38%から20%に減らすことを目標とし、参加した女性たちについて、体重の増減、コレステロールの数値、脳卒中、心臓発作、乳癌、直腸癌、その他の心血管疾患を発症するかどうかについても調べた[17]。毎日の食事の摂取カロリーは360kcal分減らし、少ない量を食べ続けた。参加した女性たちは「少なく食べるように」「脂肪が少ないものを食べるように」「運動するように」という指示も与えられ、減食と運動を忠実にこなし続けた[7]

この生活を8年間続けた結果、女性たちは(実験開始前と比べて)1人あたり平均で約1kg体重が減ったが、その腰回りは膨らんだ[7]。この事実が意味するところは、「彼女らの身体から減ったのは脂肪ではなく、筋肉である」ということである。また、研究者たちは「脂肪分の少ない食事は、心疾患、癌、その他の病気を予防できなかった」とも報告している。脂肪の摂取量が少ない食事には、乳癌、心臓病、脳卒中の発症リスクを下げる効果も、閉経後の女性の結腸直腸癌のリスクを下げる効果も一切無かった[18]。彼女らが受けたカウンセリングおよび食事の意味として、意識的か無意識的かを問わず、「少なく食べるよう心掛けた」ことである[7]。「消費カロリーが摂取カロリーを上回れば体重は減る」のが本当であるのなら、この試験に参加した女性たちが太った理由が説明できなくなる。脂肪は1kgにつき、約7000kcalのエネルギーに相当する。彼女らが、毎日の食事の摂取カロリーを360kcal減らしていたのなら、実験を開始して3週間で約1kgの脂肪が減っていたはずであり、1年続ければ約16㎏の脂肪が減る計算になる。試験開始の時点で、参加した女性たちの半数は肥満体であり、大多数は少なくとも過体重であった[7]。研究者たちは、「低脂肪食は乳癌を患うリスクを下げるだろう」と考え、栄養士たちは「脂肪の摂取量について、目標の数値である20%まで下げれば、低脂肪食の効果が明白になった可能性がある」と述べた[17]。8年間かけて行われたこの研究結果はアメリカ医師会雑誌(『Journal of the American Medical Association』)に掲載された。『女性の健康構想』の研究結果が示しているのは、「癌や心血管疾患を防ぐという目的において、低脂肪食には何の効果も無い」ということである[17]

ハーバード大学の研究者ブルース・ビストリアン(Bruce Bistrian)は、「減食(食べる量を減らす)は、肥満に対する処置にも治療法にもならない。最も目立つ症状を一時的に緩和する方法でしかない。もしも減食が肥満に対する処置にも治療にもならないとするなら、これは『過食は肥満の原因ではない』ことを示す」と述べている[7]。「過食が肥満の原因である」という考えに疑問を投げかけるあらゆる理由の中で最も明確なものは、「肥満は、食べる量を減らしても治せない」という事実である。

1977年、アメリカ合衆国において、運動熱の高まりが強まっていたころ、アメリカ国立衛生研究所は、肥満および体重制御についての2度目の会議を主催した。この会議に集まった専門家たちは、「体重を制御するという点において、運動の重要性は、想像している以上に低い。ヒトは運動量を増やせば、同時に食べる量も増えがちになり、運動による消費エネルギーの増加が食べる量の増加に勝るのかどうか、それを予測するのは不可能である」という結論に達した[7]

カリフォルニア州ローレンスバークリー国立研究所(Lawrence Berkeley National Laboratory)の統計学者、ポール・ウィリアムズ(Paul Williams)と、スタンフォード大学の研究者ピーター・ウッド(Peter Wood)は、普段からよく走る習慣のある13000人を集め、これらのランナーたちの1週間の累計走行距離と、年ごとの体重の変化を比較する研究を行った。ピーター・ウッドは、運動が健康にどのような影響を及ぼすのかについて、1970年代から研究を行っていた人物でもある。この13000人のランナーについての研究では、最もたくさん走った人ほど最も体重が少ない傾向こそあったが、これらのランナー全員、「年を追うごとに太っていく(身体に脂肪が蓄積していく)」傾向にあった[7]

1970年代までに、「運動には肥満を解消する効果は無い」という証拠は多数あったが、研究者たちを「運動すれば体重を維持あるいは減少できる」という信念に駆り立てたのは、それが「真実である」と信じたがっていた彼らの願望と、公に「そうではない」と認めることに対する彼らのためらいがあった。研究者たちは、実際の証拠が何を示そうとも、「運動とエネルギー消費が肥満の程度を決めるという考えを後押しする結果だけ」を論議した。一方で、この見解を反証する証拠に対しては、その数がどれほど多かったとしても、無視した[7]

2007年、ハーバード大学医学部長ジェフリー・フライアー(Jeffrey Flier)とその妻テリー・マラトス・フライアー(Terry Maratos-Flier)は、雑誌『Scientific American』に論文を寄稿し、その中で「ヒトの食欲とエネルギーの消費について、この2つは人間が意識的に変えられるような代物ではない」「この2つの要素のバランスの補正と結果が脂肪組織の増減につながるなどという、そんな単純な変数ではない」と述べている[7]

2007年8月、アメリカ心臓協会(The American Heart Association)とアメリカスポーツ医学会(The American College of Sports Medicine)は、身体活動と健康に関するガイドラインを共同で発表した。この団体の専門家たちは、週に5日、1日に30分程度の精力的な運動が「健康を保ち、促進するために必要である」と述べた。しかし、「肥満になることや痩せたままでいることに対して、運動がどのような影響を与えるのか」という質問になると、彼らは以下のようにしか答えられなかった。

「1日あたりのエネルギー消費の多い人は、それが少ない人に比べて、時間とともに体重が増える可能性が低い、と仮定することは理にかなっている。これまでのところ、この仮説を支持する証拠となるものについては、『説得力がある』とは呼べない」[7]

1970年代までに、「運動には肥満を解消する効果は無い」という証拠は多数あったが、研究者たちを「運動すれば体重を維持あるいは減少できる」という信念に駆り立てたのは、それが「真実である」と信じたがっていた彼らの願望と、公に「そうではない」と認めることに対する彼らのためらいがあった。研究者たちは、実際の証拠が何を示そうとも、「運動とエネルギー消費が肥満の程度を決めるという考えを後押しする結果だけ」を論議した。一方で、この見解を反証する証拠に対しては、その数がどれほど多かったとしても、無視した[7]

2007年、ハーバード大学医学部長ジェフリー・フライアー(Jeffrey Flier)とその妻テリー・マラトス・フライアー(Terry Maratos-Flier)は、雑誌『Scientific American』に論文を寄稿し、その中で「ヒトの食欲とエネルギーの消費について、この2つは人間が意識的に変えられるような代物ではない」「この2つの要素のバランスの補正と結果が脂肪組織の増減につながるなどという、そんな単純な変数ではない」と述べている[7]

2007年8月、アメリカ心臓協会(The American Heart Association)とアメリカスポーツ医学会(The American College of Sports Medicine)は、身体活動と健康に関する指針を共同で発表した。この団体の専門家たちは、週に5日、1日に30分程度の精力的な運動が「健康を保ち、促進するために必要である」と述べた。しかし、「肥満になることや痩せたままでいることに対して、運動がどのような影響を与えるのか」という質問になると、彼らは以下のようにしか答えられなかった。

「1日あたりのエネルギーの消費量が多い人は、それが少ない人に比べて、時間とともに体重が増える可能性が低い、と仮定することは理にかなっている。今のところ、この仮説を支持する証拠となるものについては、説得力は無い」[7]

1960年、疫学者のアルヴァン・ファインシュタイン(Alvan Feinstein)は、医学雑誌『The Journal of Chronic Diseases』に掲載された批評で様々な肥満治療の有効性について分析し、その中で、「エネルギーの消費量を増やすという点において、運動は何の役にも立たない」とし、肥満を治す手段として「運動」を却下した。ファインシュタインは、「体重を減らす目的で十分なカロリーを消費するには、『やり過ぎ』と呼べるぐらいの身体活動が必要になる。 さらに、身体運動は食べ物に対する欲求を惹起し、その後のカロリーの摂取量が、運動中に失われたものを超えてしまう可能性が出てくる」と指摘した[19]

1973年10月、アメリカ国立衛生研究所(The National Institutes of Health)は肥満についての会議を主催した。この会議の参加者の1人でスウェーデン人の研究者、パル・ビヨントルプ(Per Björntorp)は、肥満と運動に関する自身の臨床試験の結果について報告した。ビヨントルプは肥満体の被験者7人に対して週3回の運動計画を実施し、半年間続けた。結果は、半年間の運動を経て被験者たちの身体は相変わらず重く、太ったままであった[19]1977年、アメリカ国立衛生研究所は2度目の肥満会議を主催した。この会議に集まった専門家たちは最終的に以下の結論に達した。

「体重の管理における運動の重要性は信じがたいほどに低い。ヒトは運動量を増やせば、同時に食べる量も増えがちになり、運動による消費エネルギーの増加が食べる量の増加に勝るのかどうか、それを予測するのは不可能である」[7]

1989年、デンマーク人の研究者が、身体活動が体重減少に及ぼす影響についての研究結果を公表している。普段から座りがちな被験者を、マラソン(26.2マイル)を走れるよう訓練させた。18か月間の訓練を経て、被験者らは実際にマラソンに参加した。この研究に参加した18人の男性の体脂肪は平均で5ポンド(約2.3㎏)減っていたが、女性の被験者9人については、「体組成の変化は一切見られなかった」と書いている[7]。この年、ニューヨークにあるセントルーク・V・ルーズヴェルト病院肥満研究センター長、ハビエール・ピサニイェール(Xavier Pi-Sunyer)は、「運動量を増やせば体重を減らせる」という考えを分析している現存する試験について再調査を行った。彼の結論は以下のとおりであった。「体重と体組成における減少、増加について、変化は一切見られなかった」[7]

1950年代半ば、ハーバード大学の栄養学者ジャン・メイヤー(Jean Mayer)は、ラットを使ったある実験を行った。毎日数時間、強制的に運動をさせられたラットと、運動を強制されなかったラットとで、ラットの食事量と体重の変化について研究した。運動プログラムに沿って運動を行ったラットは、運動をしなかった日にはより多く餌を食べ、運動をしていない時には身体を動かさないようにすることで消費エネルギーを減らした。一方、運動を強制されたラットの体重は、運動を強制されなかったラットと「全く同じまま」であった。そして、実験用のラットがこの運動プログラムから解放されると、かつてなかったほどの量の餌を食べるようになり、運動を強制されなかったラットよりも、歳とともに急速に体重が増えた。また、ハムスターとアレチネズミを使った研究では、運動させると「体重と体脂肪が増加する」結果に終わった。

このように、運動は、動物を肥満にさせることはあっても痩せさせることは無かった[7]

2019年に発表された研究で、24週間、毎日ウォーキングを続けることで身体に及ぼす影響について調べる実験が行われた。歩数はそれぞれ10000歩、12500歩、15000歩であった。結果は、除脂肪体重は増えたが脂肪も増加し、体重は全く減らなかった。研究者らは、「ウォーキングには、体重の増加・脂肪の増加を防ぐ効果は見られなかった」と結論付けている[20]

ジョギングを普及させたことで知られるジム・フィックス(Jim Fixx)は、自身がジョギングに励んでいる最中に心臓発作を起こして倒れ、そのまま死亡しており[21]、運動は身体や臓器に負担をかける。

ジョギングの最中およびジョギングを終えた直後に冠状動脈性心臓病(Coronary Heart Disease)で死亡する例は決して珍しいものではない[22][23][24]。精良な運動能力が運動中の死亡事故から身体を保護することを示す証拠は無い[25]

走っている最中に死亡した40歳以上の人間の死因の多くは冠状動脈性心臓病である。10年間で22 - 176km、週に平均で53kmの距離を走っていた40 - 53歳(平均年齢46歳)の5人の白人ランナーが走行中に突然死し、その剖検によれば、ランナーとして走るようになる前に心臓病を患っていた者は1人もいなかった[26]

体育館にてトレッドミルを使って走っていた57歳の男性が、その最中に突然死亡した。彼の死因は「虚血性心疾患」(Ischemic Heart Disease)であった。研究者らは「身体活動を不定期に行う人は、そうでない人に比べて突然死の危険が高い」「極端な身体活動は、たとえ以前にその症状が無かったとしても、心臓に致命的な結果をもたらす可能性がある」と報告している[27]

ケープタウン大学の教授で運動生理学スポーツ医学の専門家、ティム・ノークス(Tim Noakes)は、運動中の突然死について、「50歳以上の人は、あらゆる種類の運動を開始する前に、心血管の診断を受ける必要がある。50歳未満の人でも、突然死した人物の家族歴について面談を行い、心血管疾患の症状とその臨床徴候についての診断を受ける必要がある」「肥大型心筋症を患っている場合、運動中に死亡する危険が高くなる」「アスリートたちは運動中の心臓病の発症を予防できるとは限らない」と書いている[28]

運動していても、炭水化物を食べている限り高血糖は防げず(高血糖を惹き起こす最も一般的な原因は炭水化物の摂取にある[29])、インスリン感受性は運動を終えた途端に低下する(インスリン抵抗性が高くなる)[30]。インスリン抵抗性は運動では防げない。

「インスリン感受性が低い」ということは、「インスリン抵抗性が高い」(インスリンの効き目が悪い)状態を意味する[31]

度が過ぎる運動はミトコンドリア(Mitochondria)の機能障害を惹き起こし、耐糖能(Glucose Tolerance, 上昇した血糖値を下げる、血糖値を正常に保つ能力)も低下させてしまう[32]

ゲアリー・タウブスは、「『体重を減らす目的で、食べる量を減らして運動量を増やす』という考え方は一見筋が通っているように見えるが、実際には間違っているだけでなく、何の役にも立たない」[19]、「We don't get fat because we overeat; we overeat because we're getting fat.」(「ヒトは過食するから太るのではなく、身体が今まさに太りつつあるから過食に走るのである」)と明言している[7]。また、「肥満は、エネルギーバランス、カロリー理論、過食、熱力学、物理法則とは、何の関係も無い」「過食や運動不足は肥満の原因ではなく、あくまで『結果』でしかない」「『肥満』とは『栄養過剰』ではなく、『栄養失調』の一種である」と断じている[7]。また、「もしも座りがちな生活が我々を肥満にさせ、運動がそれを防いでくれるというなら、肥満ではなく『痩せ』が流行するはずである。しかし実際には、運動熱の始まりと同時に肥満の流行が起こった」と指摘している[7]。また、「減量が目標であり、あなたの健康と生活がそれに左右されるとしても、『1年半の間毎日努力を続ければ、脂肪を5ポンド(約2.3㎏)減らせるかもしれない』と言われたら、あなたは26マイル(42km)を走れるようになるための訓練をするだろうか?」と問いかけている[7]

炭水化物制限食

アメリカ合衆国の医師、ロバート・アトキンス(Robert Atkins)は、1959年にニューヨーク・マンハッタンにあるアッパー・イースト・サイドにて、心臓病および補完代替医療の専門医として開業した[33]

開業したての頃のアトキンスの仕事はあまりうまくいかず、さらには身体が太り始めたことで、アトキンスは意気消沈していた。ある時、アトキンスは、デラウェア州にある会社、デュポン社(DuPont)に所属していた、アルフレッド・W・ペニントン(Alfred W. Pennington)が研究し、従業員に提供していた食事法を発見した[34]

1940年代、ペニントンは、過体重か太り過ぎの従業員20人に、「ほぼ肉だけで構成された食事」を処方していた。彼らの1日の摂取カロリーは平均3000kcalであった。この食事を続けた結果、彼らは平均で週に2ポンド(約1㎏)の減量を見せた。この食事を処方された過体重の従業員には、「一食あたりの炭水化物の摂取量は20g以内」と定められ、これを超える量の炭水化物の摂取は許されなかった。デュポン社の産業医療部長、ジョージ・ゲアマン(George Gehrman)は、「食べる量を減らし、カロリーを計算し、もっと運動するようにと言ったが、全くうまくいかなかった」と述べた。ゲアマンは、自身の同僚であるペニントンに助けを求め、ペニントンはこの食事を処方したのであった[7]

アトキンスは、ペニントンが実践していたこの食事法からヒントを得て、患者を診療する際に「炭水化物が多いものを避けるか、その摂取量を可能な限り抑えたうえで、肉、魚、卵、食物繊維が豊富な緑色野菜を積極的に食べる」食事法を奨め、それと並行する形で本を書き始めた。1972年、『Dr. Atkins' Diet Revolution』(邦題:『アトキンス博士のローカーボ(低炭水化物)ダイエット』)を出版し、その数年後に補完代替医療センターを開設した[35]

2002年、アトキンスは心臓発作を起こして倒れた。これについて、「高脂肪の食事が潜在的にどれほど危険であるかが証明された」という批判を数多く浴びた。しかし、複数のインタビューで、アトキンスは「私が心停止になったのは、以前から慢性的な感染症を患っていたからであって、脂肪の摂取量の増加とは何の関係も無い」と強く反論した[36][37][38]。なお、「食事に含まれる脂肪分の摂取と、肥満や各種心疾患とは何の関係も無い」というのは、炭水化物を制限する食事法を奨める人物に共通の見識である。

2003年4月、ニューヨークに大雪が降り、地面は凍結した。4月8日、アトキンスは通勤のため、凍った路上を歩いている途中、足を滑らせて転倒して頭部を強打し(これが直接の致命傷となった)、意識不明の重体となり、集中治療室で手術を受けるも、意識が戻らないまま死亡している[39][40][41]

アトキンス以前の食事療法

ジャン・アンテルム・ブリア=サヴァラン

フランスの法律家で美食家のジャン・アンテルム・ブリア=サヴァラン(Jean Anthelme Brillat-Savarin)は、1825年出版の著書『Physiologie du goût』(『味覚の生理学』)にて、 「思ったとおり、肉食動物は決して太ることはない(オオカミジャッカル猛禽類カラス)。草食動物においては、動けなくなる年齢になるまで脂肪が増えることは無い。だが、ジャガイモ穀物小麦粉を食べ始めた途端、瞬く間に肥え太っていく。・・・肥満の主要な原因の2つ目は、ヒトが日々の主要な食べ物として消費している小麦粉やデンプン質が豊富なものだ。前述のとおり、デンプン質が豊富なものを常食している動物は、いずれも例外なく、強制的に脂肪が蓄積していく。ヒトもまた、この普遍的な法則から逃れられはしない」[42]、「ヒトにおいても、動物においても、脂肪の蓄積はデンプン質と穀物によってのみ起こる、ということは証明済みである」[42]、「デンプン質・小麦粉由来のすべての物を厳しく節制すれば、肥満を防げるだろう」[42]と述べ、「身体に脂肪が蓄積するのはデンプン砂糖を食べるからだ」と断言している。ブリア=サヴァランは、タンパク質が豊富なものを食べるよう勧めており、デンプン、穀物、小麦粉、砂糖を避けるよう力説している[43][44]

ウィリアム・バンティング

炭水化物を避けるか、可能な限りその摂取を制限し、タンパク質脂肪を重点的に摂取する食事法の創始者は、ロバート・アトキンスが元祖というわけではない。前述した、デュポン社のアルフレッド・ペニントン以前に、ジャン・アンテルム・ブリア=サヴァラン(Jean Anthelme Brillat-Savarin, 1755~1826)、ジャン=フランソワ・ダンセル(Jean-François Dancel)、ユストゥス・フライヘアー・フォン・リービッヒ(Justus Freiherr von Liebig )、ウィリアム・ハーヴィー(William Harvey, 1807~1876)、ウィリアム・バンティング(William Banting, 1796~1878)、ジョン・ユドキン(John Yudkin, 1910~1995)といった、歴史上の様々な人物が実践してきた方法である[7]。彼らはいずれも、「肉のような栄養価の高い食べ物は、ヒトを太らせることはない」「ヒトを太らせるのは、小麦粉のような精製された炭水化物、とくに砂糖である」「食事に含まれる脂肪分は、肥満や各種心疾患とは何の関係も無い」と確信していた[7]。アトキンスも著書『Dr. Atkins' Diet Revolution』の中で、「砂糖は始末に負えない厄介な物体」と断じている。

ウィリアム・バンティングは、ロンドン生まれの葬儀屋であった。バンティングは、自身が太り過ぎていたことに悩んでいた。その彼に炭水化物の摂取を制限する食事法を奨めたのは、医師であり友人でもあったウィリアム・ハーヴィーであった。ハーヴィーがこの食事法を学んだのは、フランスの医師、クロード・ベルナール(Claude Bernard, 1813~1878)がパリで行った糖尿病についての講演を聴いたのがきっかけであった[45][46]

クロード・ベルナールの講演を聴く前までのハーヴィーは、「体重を減らすには、激しい身体活動に励めば良い」と考えており、バンティングに対してそうするよう伝えた。バンティングは「早朝に2時間、ボートを漕ぐ」ことにし、テムズ川でボートを漕ぎ続けた。彼の腕の筋力は強化されたが、それとともに猛烈な食欲が湧き、その食欲を満たさねばならなくなり、体重は減るどころかどんどん増えていった。ハーヴィーは友人に対し、「運動を止めなさい」と言った[7]。「運動には体重を減らす効果は無い」と悟ったためである。ハーヴィーから炭水化物の摂取を制限する食事法を教わり、実践したバンティングは、最終的に50ポンド(約23㎏)の減量に成功している。

1863年、バンティングは、減量に成功した食事法や、減量にあたって試しては失敗を続けてきた方法をまとめた『Letter on Corpulence, Addressed to the Public』(『市民に宛てた、肥満についての書簡』)を出版した。バンティングが出版したこの小冊子の内容は、その後、何年にも亘って受け入れられ、新しい食事の模範として取り入れられるようになった[46]。当初は自費出版で発表したが、かなりの人気を呼んだことで、一般市民に販売しようと決めた。第3版は、2007年に印刷されたものがオンラインでも読むことが可能[47]

バンティング自身、『Letter on Corpulence, Addressed to the Public』の中で、「減量に対して何の効果も無い方法」の1つに、「食べる量を減らして運動量を増やす」を挙げている。イングランドの医師、トマス・ホークス・タナー( Thomas Hawkes Tanner, 1824~1871 )も、 著書『The Practice of Medicine』の中で、「肥満を治療するにあたっての『ばかげた』治療法」の1つに、「食べる量を減らす」「毎日多くの時間を散歩と乗馬に費やす」を挙げている[7]

Letter on Corpulence』はまもなくベストセラーとなり、複数の言語にも翻訳された。その後、「Do you bant?」(「ダイエットするかい?」)、「Are you banting?」(「今、ダイエット中なの?」)という言い回しが広まった。この言い回しは、バンティングが実践した食事法について言及しており、時にはダイエットそのものを指すこともある[45]。のちにバンティングの名前から、「Bant」は「食事療法に励む」という意味の動詞として使われるようになり、「Banting」という言葉は、このウィリアム・バンティングの名にちなんで使われるようになった[48]。「Bant」はスウェーデン語にも輸入され、「Att banta」は「to bant」(「食事療法に励む、ダイエットする」)、「Nej, tack, jag bantar」は「No thank you, I am banting.」(「いいえ、結構。今はダイエット中なんだ」)の意味で使われるようになった[45]。英語辞典のメリアム・ウェブスター(Merriam Webster)では「Banting」について、「肥満体策としての食事療法で、炭水化物や甘い味付けの食べ物を避ける」と定義している[49]

南ローデシア(現在のジンバブエ)出身の科学者ティム・ノークス(Tim Noakes)は、「低糖質・高脂肪ダイエット」と名付け、この食事法を普及させた[50]。ノークスは、「脂肪の摂取を減らし、炭水化物を沢山摂取せよ」と奨める考え方を「Genocide」(「大量虐殺」)と断じている[51]

サイエンス・ジャーナリストゲアリー・タウブス(Gary Taubes)による著書『Good Calories, Bad Calories』(2007年)では、「A brief history of Banting」(「バンティングについての簡潔な物語」)と題した序章から始まり、バンティングについて論じている[19]。。炭水化物の摂取を制限する食事法についての議論の際には、しばしばバンティングの名前が挙がる[52][53][54][55][56]

なお、バンティングは、この食事法が広まった功績は、自分にではなく、「(この食事法を教えてくれた)ハーヴィーにある」と主張した。ウィリアム・バンティングが減量に成功したのは、食べる量を減らしたからでも、運動に励んだからでもなく、「炭水化物を制限したから」である。1886年ベルリンで開催された内科学会にて、食事療法についての討論会が行われた際、肥満患者を確実に減らせる食事療法が3つ紹介され、バンティングが実践していた方法がそのうちの1つとして紹介された。残りの2つはいずれもドイツ人の医師が開発した方法であるが、いずれにも共通するのは

  • 「肉は無制限に食べて構わない」
  • 「デンプン質・糖質は完全に禁止」

というものであった。1957年、精神医学者で小児肥満の研究者でもあったヒルデ・ブルッフ(Hilde Bruch)はこれを紹介したうえで、「食事管理による肥満の抑制における大きな進歩と呼べるのは、身体の中で脂肪を生成するのは肉ではなく、パンや甘く味付けされた食べ物のような、『無害』と思われていたものこそが肥満をもたらす、と認識された点にある」と述べた[57]1973年には、肥満について「脂肪組織において調節障害が惹き起こされている」とも述べている[58]1934年にアメリカ合衆国に移住したブルッフは、当時のニューヨークが「肥満体の子供で溢れかえっていた」と記録しており、太っている子供たちはどれだけ食べる量を減らしたところで痩せることは無く、身体は太ったままであった。体重を減らす目的で「食べる量を減らす」を実行したところで、いずれも全て例外なく失敗に終わる。

ブレイク・F・ドナルドソンによる肥満治療

ニューヨークで心臓病専門医をやっていたブレイク・F・ドナルドソン (Blake F. Donaldson)は、「肥満体の心臓病患者」に対し、1919年ごろから「ほぼ肉だけで構成された食事」を処方した[59]。1日3回の食事で、1日の摂取カロリーは少なくとも3,000 kcalはあった。ドナルドソンもまた、「食べる量を減らして運動量を増やす」を行っても体重は全く減らないことに気付いていた[59]。脂肪の総摂取量は1日の摂取カロリーのうちの75 - 80%であり、2ポンド (907 g)の脂肪が付いた牛肉を食べるよう患者に指導した。脂肪の摂取量がこれより少なかったり、食事を抜いたりすると、患者の体重減少速度は低下したという[59]。ドナルドソンによれば、40年後に引退するまでに、17,000人の肥満患者にこの食事を処方したという。ドナルドソンは自然史博物館を訪れ、そこに常駐していた人類学者に「先史時代の我々の祖先たちはどんなものを食べていたのか?」と尋ねたところ、人類学者は「我々の祖先は脂肪が非常に多い肉を食べていた」と答えたという。ドナルドソンは、「いかなる減量食であれ、脂肪がとても多い肉こそが不可欠である」と判断し、この食事を肥満患者に処方していた。ドナルドソンの患者たちは、空腹感に悩まされることなく週に2 - 3ポンドずつ体重を減らせたという。体重を減らせなかったのは「パン中毒の患者」であったという。ドナルドソンは1961年に出版した著書『Strong Medicine』(『効き目の強い薬』)にて、「医者が糖尿病についてどれだけ知っているか、というのはどうでもいい話だ。体重を減らし、その減った体重を維持するにはどうすればいいかを知らないのであれば、その人物は医者失格である。身体が太りやすく、体重増加を抑制する方法について自ら学んだ医師であれば、問題の深刻さをより理解しているようだ」と述べている[59]。ドナルドソンは、北極で暮らすエスキモーたちと一緒に暮らした経験のある探検家、ヴィルヒャムル・ステファンソン (Vilhjálmur Stefánsson)の友人であり、ステファンソンによる食事も参考にした[60]

完全肉食生活

ステファンソンは、食事療法、とりわけ、炭水化物が少ない食事療法に大いに関心を抱いていた。ステファンソンはイヌイットたちの食事について、「全体の90%が肉と魚で構成されている」と記録している。彼らの食事は「Zero Carb」「No Carb」(「炭水化物をほとんど含まない食事」)と見なされるかもしれない(彼らが食べていた魚にはわずかな量のグリコーゲン(Glycogen)が含まれてはいたが、炭水化物の摂取量は全体的にごく僅かであった)。ステファンソンの仲間の探検家たちも、この食事法で完全に健康体であった。イヌイット(ステファンソンの時代には「エスキモー」と呼ばれていた)たちとの暮らしから数年後、ステファンソンは、アメリカ自然史博物館からの要請で、同僚のカーステン・アンダーソン(Karsten Anderson)とともに再び北極を訪れた。2人のもとには「文明化された」食料が1年分補給される予定であったが、2人はこれをやんわりと断った。当初の計画は1年間であったものが、最終的には4年間に延長された。北極圏にいた2人がその4年間で食べていたものは、捕えて殺して得られた動物の肉と魚だけであった。4年に亘る肉食生活を送る過程で、2人の身体には異常も悪影響も見られなかった。ウィリアム・バンティングと同じく、炭水化物のみを制限し、身体が本当に必要としている食べ物を食べ続けた場合、身体は完全に機能し、壮健さと細身を維持できることが明らかとなった。「カロリー」については一切無視された[45]

肉だけを食べる食事法が続行可能かどうかについての見解をステファンソンが報告した際には多くの懐疑論が出たが、のちに行われた研究と分析で、それは可能であることが裏付けられた[61]。複数の研究結果により、イヌイットたちの食事法は「ケトン食療法」であることが示された。彼らは主に魚や肉を煮込んで食べており、時には魚を生で食べることもあった[62][63][64]

1928年、ステファンソンとアンダーソンの2人はニューヨークにあるベルヴュー病院(en:Bellevue Hospital)に入院し、完全肉食生活が体に及ぼす影響についての実験台となった。実験の期間は1年間であり、コーネル大学のウジェーヌ・フロイド・デュボア(en:Eugene Floyd DuBois)が実験を指揮した。ステファンソンとアンダーソンの2人は、注意深く観察された実験室という設定で、最初の数週間、肉だけを食べ続けても問題無いことを証明する研究の着手に同意し、「食事における決まり事」を確かなものにするために観察者が付いた。スコット・カトリップ(en:Scott Cutlip)による著書『The Unseen Power: Public Relations』によれば、ペンドルトン・ダッドリー(en:Pendleton Dudley)がアメリカ食肉協会(en:American Meat Institute)に対して、この研究に資金を提供してもらえないか、と説得したという[65]。この間にアンダーソンには糖尿病の症状が発現した。糖尿病における病理とは異なり、この研究の過程でアンダーソンの身体に見られた糖尿病の病状の期間は4日間であった。耐性を調べるためにブドウ糖100gを投与させたことと、肺炎の発症はいずれも同時期であった。この時のアンダーソンは、水分と炭水化物が多い食事を取っており、これを排除すると、糖尿病の症状は消滅した[66]。ステファンソンは、研究者から「脂肪が少ない赤身肉だけを食べる」よう依頼された。ステファンソンには脂肪がほとんど無い肉を食べ続けると2-3週間後に健康を損なった経験があり、「脂肪がほとんど無い肉」は「消化不良」を引き起こす可能性がある、と指摘した。この肉を食べ続けて3日目、ステファンソンは吐き気と下痢に見舞われ、そのあとに便秘が10日間続いた[67]。早い段階で体調不良に陥ったのは、自身が以前に食べていたカリブー(トナカイ)の肉と比べて脂肪が少ない肉を食べ続けたのが原因である、とステファンソンは考えた[68]。脂肪が多い肉を食べるようにすると、2日以内に身体は完全に回復した。最初の2日間、ステファンソンが取っていた食事は、脂肪の摂取量が三分の一に減っていた点を除けば、エスキモーが取っていた食事に近いものであった。タンパク質の摂取カロリーは全体の45%を占めており、3日目には腸に異常が見え始めた。次の2日間でステファンソンはタンパク質の摂取量を減らし、脂肪の摂取量を増やした。摂取カロリーの約20%をタンパク質で、残りの80%を脂肪で占めるようにした。この2日間での高脂肪食でステファンソンの腸の状態は投薬無しで正常に戻った。その後、ステファンソンはタンパク質の1日の摂取カロリーが25%を超えないようにした[67]。2人の身体は健康を保ち、腸も正常なままであった。彼らの便は小さく、匂いも無かった。ステファンソンには歯肉炎があり、歯石の沈着が増加するも、実験が終わるまでには消えていた。実験中のステファンソンの摂取カロリーは2000~3100kcalで、そのうちの20%はタンパク質であり、残りの80%は動物性脂肪から得ていた[45]。栄養素の1日の摂取量については、タンパク質は100-140g、脂肪は200-300gで、炭水化物については7-12gであった[67]1929年に発表された論文では、この時の臨床研究について詳述されている[69]。ステファンソンによれば、エスキモーたちは赤身肉(タンパク質)の摂取を制限し、余分な赤身肉は犬に与えて食べさせ、脂肪を確保して食べたという[70]

1946年、ステファンソンは、エスキモーたちとの食生活について綴った著書『Not by Bread Alone』(『パンのみにあらず』)を出版し、1956年にはこの本の拡張版とも言える内容の著書『The Fat of the Land』(『大地の脂肪』)を出版した[71]

アルフレッド・W・ペニントンによる肥満治療

前述したデュポン社のアルフレッド・W・ペニントンはドナルドソンの講演を聴き、この食事法を自分で試してから、デュポン社の肥満体の従業員に処方し始めた[60]。ペニントンは、「肥満とは、脂肪からエネルギーを生成する能力が損なわれている状態であり、肥満患者は絶えず空腹に襲われる」「肥満になったあとに食欲が増進するのであってその結果ではない」(「沢山食べるから肥満になる」わけではない)と報告している[60]。ペニントンは「炭水化物のみを制限し、タンパク質と脂肪で構成され、カロリーを一切制限しない食事は、肥満を治療できるように思われる」「ケトン体の生成 (en:Ketogenesis)は、体が脂肪を利用する機会を増やすための重要な要素のように思われる」「この食事法は、カロリーを制限した食事を摂っていると遭遇するであろう代謝の低下を回避できるように思われる」「脂肪の摂取量を制限する必要は一切無い」「肥満を治療する食事を用意する際にはタンパク質に重点が置かれることが多いが、重要なエネルギー源として脂肪に重点を置く必要があるようだ」と報告している[60]

1950年6月、雑誌『ホリデイ』(Holiday)は、ペニントンが発表した食事法について、「Believe it or not diet development」(「信じがたいような食事法の開発」)、「An eat-all-you-want reducing diet」(「食べたいだけ食べて体重を減らす食事法」)と呼んだ[19]1952年、ハーバード大学栄養学部が主催した肥満についての討論会にペニントンは出席し、その食事法について発表した。討論会の議長を務めたマーク・ヘグステッド(Mark Hegsted)は、「この場にいる人々の多くは、ペニントン博士が発表した食事法が、肥満を治療するにあたり、間違いなく正しいやり方である、と感じている」と述べ、そのうえで「この食事法が高確率で好結果をもたらす点は印象的である。より大規模で、より公平な比較試験が必要だ」「カロリーを制限すること以外の肥満の治療手段については、考え付くあらゆる方法による研究が必要だ」と結論付けた[19]。イギリスの内分泌学者、レイモンド・グリーン(Raymond Greene)は、「炭水化物を排除する代わりにタンパク質と脂肪をたっぷり摂取するペニントンの食事法は素晴らしい効果を発揮し、炭水化物・タンパク質・脂肪全体の摂取量を減らす食事よりも食べる量を増やせる・・・食事内容は単調である必要は無くなり、患者の多くはこの食事法を気に入ることになる」と述べた[19]カンザス州の医師、ジョージ・L・トープ(George L. Thorpe)は、1957年に開催されたアメリカ医師会の年次総会に出席し、「準飢餓状態を要求する食事(semi-starvation diets)では脂肪が減少するどころか、身体全体で消耗と衰弱が起こり、慢性的な栄養失調が続き、必然的に失敗に終わるであろう」と非難した。ペニントンによる食事法を試したトープは、自分の患者たちにこれを処方し始めた。トープによれば、「少量の野菜を含んでいても、月に6-8ポンドの体重減少が見られた」という。トープは「複数の情報源による証拠に基づき、減量を成功させるにあたって高タンパク・高脂肪・低糖質の食事を採用するのは十分な理由となる」と結論付けた[19]。1957年にトープが発表した論文では、肥満患者の治療法について「準備が極めて簡単で、大抵は容易に達成可能な高タンパク・高脂肪・低糖質な食事法である。空腹感・脱力感・倦怠感・便秘を伴うことなく、他の何よりも迅速に体重を減らせる食事であり、それは肉、脂肪、水で構成される。『どれぐらいの量を食べたか』については記録する必要は無い。『脂肪:1』に対して、『赤身:3』の比率を維持し、患者は約170gの赤身肉と57gの脂肪を1日に3回摂取する。ブラックコーヒー、茶、水は無制限に飲んで構わない。塩分の摂取量は減らさない。患者が味気無さを訴えた場合は、食事に変化を持たせる意味で、特定の果物と野菜を付け足す。肥満患者は蔑ろに扱われてはならない」と書いている[72]

前述のレイモンド・グリーンは、1951年に出版した『The Practice of Endocrinology』(『内分泌学の実践』)にて、以下のように記述している[73]

避けるべきもの
  1. パン、および小麦粉で作ったものすべて
  2. シリアル(朝食用と牛乳プリンを含む)
  3. ジャガイモと白い根菜類
  4. 砂糖を多く含むもの
  5. すべての甘いお菓子
以下の食べ物は食べたいだけ食べてよい
  1. 肉・魚・鳥
  2. すべての緑色野菜
  3. 卵(乾燥したもの、生のもの)
  4. チーズ
  5. バナナとブドウを除く、無糖の、あるいはサッカリンで甘くした果物

1958年の時点で痩身目的の食事法が数多く流行していたが、それらの多くは科学的根拠が無いものであった。クイーン・エリザベス大学の栄養学教授、ジョン・ユドキンJohn Yudkin)は、「炭水化物を制限すれば体重の制御が可能である」ことを、多くの肥満患者に教示した[74]。1958年、ユドキンは炭水化物を制限する食事法について記述した著書『This Slimming Business』を出版した。1962年には紙表紙本として出版され、1974年には第4版が重刷された。本書はアメリカ合衆国では『Lose Weight, Feel Great』という題名で出版され、オランダ語とハンガリー語にも翻訳された。1961年には『The Slimmer's Cook Book』、1964年には『The Complete Slimmer』を出版した。

リチャード・マッカーネス

リチャード・マッカーネス(Richard Mackarness)は、1958年に出版した著書『Eat Fat and Grow Slim』(『脂肪を食べて細身になろう』)にて、「体重が増える原因は炭水化物の摂取にある」と明言し、「肉、魚、脂肪は食べたいだけ食べてよい」とし、穀物と砂糖を避けるよう主張した[75]。マッカーネスは、ウィリアム・バンティングによる『市民に宛てた、肥満についての書簡』に触発されてこの著書を執筆した[76][77]

ヘルマン・ターラー

ヘルマン・ターラー(Herman Taller)は、1961年に出版した著書『Calories Don't Count』(『カロリーは気にするな』)にて「カロリーが同じであれば、どの栄養素も体内で同じ作用を示す、などということはありえない」「炭水化物が少なく脂肪が多い食事は体重を減らす」「炭水化物は身体に問題を惹き起こす」「炭水化物の摂取に敏感な人の体内ではインスリンが分泌され、脂肪が生成される」と述べ、肥満を防ぐために炭水化物を避けるよう主張している[78]。ターラーがこの本を執筆する契機となったのは、アルフレッド・W・ペニントンがデュポン社の従業員に処方した食事法を知ったことにある[7]

ヴォルフガング・ルッツ

オーストリアの医師、ヴォルフガング・ルッツ(Wolfgang Lutz, 1913-2010)は、1967年に『Leben ohne Brot』(『パンの無い暮らし』)を出版し、「炭水化物の摂取を減らすことこそが、脂肪を燃焼させる唯一の方法である」「この食事法により、肥満、糖尿病、心臓病、癌を予防できる」「狩猟採集生活者として暮らしてきた人類は動物の肉を長きに亘って食べてきた」「食べ物に含まれる脂肪は、ほとんどの慢性疾患とは何の関係も無い」と断言している(ルッツは炭水化物の1日の摂取上限を「72gまで」と定めた)。ルッツによれば、40年間で10000人を超える患者を診察し、クローン病、潰瘍性大腸炎、胃疾患、痛風、メタボリック症候群、癲癇、多発性硬化症・・・この食事法を処方することでこれらの慢性疾患を治療したという。ルッツが診察してきた肥満患者で、炭水化物を制限するも体重が減らない患者がいたが、ルッツによれば「太っていた期間が長ければ長いほど肥満であり続ける可能性が高い」「炭水化物は肥満の原因ではないと言っているのではない。これは単純に、取り返しのつかないところまで来てしまっているのだ」という[79]

フィクションにおける炭水化物制限食

レフ・トルストイによる小説『アンナ・カレーニナ』にて、アンナの愛人であるウロンスキー伯爵が「身体に脂肪が蓄積するのを防ぐため、牛肉のステーキを食べ、小麦粉およびデンプン質でできた食べ物と甘く味付けされた料理を避けた」との記述がある。トルストイが1875年ごろにこの食事法を淡々と記述していた点について、エモリー学術大学(Emory College of Arts and Sciences)の学部長、ロビン・フォーマン(Robin Forman)は、「ウロンスキーはアトキンス・ダイエットに似た食事法を実践していた」「19世紀後半のロシアにおいて、炭水化物を避ける食事法がよく知られていたことを示唆している」と述べている[80]

炭水化物を制限することによる利点

炭水化物は、脂肪やタンパク質に比べてインスリンの分泌にはるかに大きな影響を及ぼす。インスリンは食事における満腹感を減少させ、摂食行動にも影響を及ぼす。炭水化物の摂取を減らすと、インスリン抵抗性は緩和される。炭水化物を制限する食事は、インスリンの濃度が高い患者に有益である証拠が示された[81]

炭水化物が少なく、脂肪が多い食事は、空腹感と満腹感に大いに影響を与える。炭水化物が多く、脂肪が少ない食事(カロリー制限食)と比較すると、高脂肪食は体脂肪を減少させ、身体のエネルギー消費量の増加を促進する[81]

炭水化物を制限する食事は、体重を減らすという目的においても、低脂肪食よりも優れている証拠を示している[82]

また、炭水化物を制限する食事は、低脂肪食よりも大幅に体重を減らし、心血管疾患の危険因子も減少させる[83]

炭水化物の少ない食事は、血糖値とその制御の大幅な改善につながり、薬物の服用回数を減らせるだけでなく、服用の必要も無くなる可能性があり、この食事法は2型糖尿病の改善と回復にも効果的である証拠が示された[84]

ケトン食を含めて、炭水化物を制限する食事法は安全であり、長期に亘って健康を維持し、さまざまな病理学的状態を防止または逆転させる力がある[85]。ケトン食を止めると(炭水化物の摂取を増やし、脂肪の摂取を減らすと)、片頭痛や癲癇発作が再発する[85]

ケトン食療法は癌の治療や予防に有効である可能性を示している[86][87][88][89]。癌細胞はケトン体をエネルギー源にはできないため、ケトン食療法を「癌の治療手段として採用すべきだ」と考える研究者もいる[90][91]

「炭水化物は肥満およびそれに伴う疾患の主要な推進力であり、精製された炭水化物や糖分の過剰摂取を減らすべきである」と結論付け、炭水化物を「Carbotoxicity」(「炭水化物には毒性がある」)という造語で表現する研究者もいる[85]

炭水化物中毒

イェール大学の生化学者、ロバート・ケンプ(Robert Kemp)は、肥満患者に炭水化物が少ない食事を処方し、肥満を治療した趣旨を述べた。1963年、ケンプは医学雑誌『Practitioner』にて論文を発表し、『Carbohydrate Addiction』(「炭水化物中毒炭水化物依存症」)という用語を提唱した[92][93][94][95]

炭水化物制限食の歴史

「太りたくないのなら、炭水化物を避けなさい」と指導する食事法は奇抜でも斬新でもなく、歴史上何度も登場している。方法論がどうであれ、「炭水化物を極力避ける」という点においては、バンティングを始め、過去の様々な人物が実践してきた食事法と同じである。

「肉食動物は決して太らない」

「ヒトを肥満にさせるのは、日々の食事を構成するデンプン質と小麦粉であり、これに砂糖も組み合わせれば確実に肥満をもたらす」

「ヒトにおいても、動物においても、脂肪の蓄積はデンプン質と穀物によってのみ起こる、ということは証明済みである」

「ジャガイモ、穀物、小麦粉由来のモノを食べ始めた途端、瞬く間に肥え太っていく」

「デンプン質の食べ物を常食している動物の身体には、強制的に脂肪が蓄積していく。ヒトもまた、この普遍的な法則からは逃れられない」

「デンプン質・小麦粉由来のすべての物を厳しく節制すれば、肥満を防げるだろう」と明言している[42]

  • 1844年、フランスの外科医で退役軍医、ジャン=フランソワ・ダンセル(Jean-François Dancel)は、肥満に関する自身の考えをフランス科学アカデミーで発表した。その著書『Obesity, or Excessive Corpulence』は、1864年英語に翻訳され、出版された。ダンセルは、

「患者が主に『肉だけ』を食べ、それ以外の食べ物の摂取は少量だけにすれば、一人の例外もなく肥満を治癒できる」

と述べている[7]。「炭水化物を避け、肉だけを食べることで肥満を治癒できる」というダンセルの主張は、ドイツ人の化学者ユストゥス・フォン・リービッヒ(Justus von Liebig)による研究を根拠にしており、リービッヒもダンセルも、肉を中心に食べる食事法を信じていた。ダンセルは、

「肉ではないすべての食べ物(炭素と水素が豊富な食物。つまり炭水化物)は、身体に脂肪を蓄積させるに違いない。肥満を治すためのいかなる治療法も、この原理に基づいている」

「肉食動物は決して太っていない一方で、草食動物は太っている。カバはかなりの量の脂肪のせいで不格好に見える。彼らは植物性の物質(米、キビ、サトウキビ・・・穀物全般)のみを餌にしている」

と述べた[7]

  • イングランドの医師、トマス・ホークス・タナー(Thomas Hawkes Tanner, 1824~1871)は、「『炭水化物を断つこと』こそが、減量を成功させる唯一の方法である」と確信していた。肥満治療について、「減食」と「身体活動」(「運動」)を、「ridiculous」(「何の価値も無い」)と切り捨てている。
  • 1866年ベルリンで開催された内科学会にて、「人気のある食事療法」に関する討論会が開かれた。その際、ウィリアム・バンティングが実践した方法が、肥満患者を確実に減らせる3種類の食事法の1つとして取り上げられた。他の2種類はドイツ人の医師が開発したもので、方法は微妙に異なるが、いずれの食事法にも共通するのは以下の2つであった。

「肉は無制限に食べてかまわない」[7]

「デンプン質が豊富なものは完全に禁止とする」[7]

  • 1950年代、ミシガン州立大学栄養学部主任マーガレット・オールソン(Margaret Ohlson)は、過体重の学生に従来型の飢餓食(※極度のカロリー制限食)を与えた。彼らの体重はほとんど減らないばかりか、

「すっかり活気が失せ、空腹であることを常に意識し続け、やる気が無くなっている」

と報告した。一方、タンパク質と脂肪を大量に含む食事を摂らせると、平均で週に3ポンド(約1.4kg)減量し、

「食間の空腹感に悩まされることはなく、気分の良さと満足感に包まれた」

と報告した。この食事法を実践した者は、いずれも特別な努力をすることなく体重を減らし、空腹感に悩まされることもなかった[7]

  • オールソンの教え子でコーネル大学の臨床学教授シャーロット・ヤング(Charlotte Young)は、1973年10月アメリカ国立衛生研究所で開催された会議にて、食事療法に関する講演を行った。医者が肥満について重点的に話し合う会議を定期的に開くようになった1960年代の半ばまでには、食事療法に関する講演が必ず行われており、それらの講演の内容はいずれも「炭水化物を制限する食事法について」であった。これらの会議のうち、5回は、1967年1974年にかけて、アメリカ合衆国と、欧州各国で開催された。ヤングは、アルフレッド・ペニントンがデュポン社で実践した炭水化物を制限する食事法を研究し、自身の師匠であるオールソンの業績について、この会議で発表した。ヤングは「体重および体脂肪の減少、その割合は、食事に含まれる炭水化物の量と逆相関しているように見える」「炭水化物の摂取量を減らし、脂肪の摂取量を増やすと、体重も体脂肪も大幅に減った」と報告した。炭水化物を制限する食事法について、ヤングは

「空腹感からの解放、異常な疲労感の緩和、満足のいく減量、長期にわたる減量とその後の体重制御への順当さに対する評価において、いずれもすばらしい臨床的成果を見せた」

と述べた[7]

  • The Principles and Practice of Medicine』の1901年度版にて、ウィリアム・オスラー(William Osler)は、肥満体の女性に対して「食べ物を食べ過ぎないこと。とくに、デンプン質が豊富な食べ物と砂糖を減らすように」と述べている[7]
  • 1907年、『A Textbook of the Practice of Medicine』にて、ジェームズ・フレンチ(James French)は、「肥満体における過剰な脂肪について、その一部は食べ物に含まれていた脂肪でできているが、その大部分は炭水化物を食べたのが原因で蓄積する」と述べている[7]
  • 1925年ロンドンにある英語版のH. ガーディナー・ヒル(H. Gardiner-Hill)は、炭水化物を制限する食事法を奨めており、医学雑誌『ランセット』(『The Lancet』)の中で「どのようなパンであれ、45~65%の炭水化物を含んでおり、食パンに至っては最大で60%に達する可能性があり、これらは廃棄されねばならない」と述べている[7]
  • 1936年デンマークの医師ペール・ハンセン(Per Hansenn)は、「『制限すべきは炭水化物だけであり、身体に脂肪を蓄積させる作用が無いタンパク質と脂肪を、空腹を感じたらいつでも食べて構わない』という点が、この食事法の有利な点である」と述べた[7]
  • 第2次世界大戦終盤、アメリカ海軍が太平洋を西に向かっていたころ、『U.S. Force's Guide』の中で、

「ニューギニアの北東にある群島、カロリン諸島では胴回りの管理に苦労するかもしれない」

「現地人の食べている基本的な食物は、パンノキの実、タロイモ、ヤマノイモ、サツマイモ、クズウコン・・・デンプン質が豊富なものであるため」

と、兵士たちに警告している[7]

  • 1946年に初版が出版されたベンジャミン・M・スポック(Benjamin M. Spock)による子育てについて記した著書『Baby and Child Care』にて「体重の増減がどれほどになるかは、デンプン質の食べ物をどれぐらい摂取するかで決まる」と記述されている。この文章はその後の50年間、全ての版で使われ続けた[7]
  • 1963年、サー・スタンリー・デイヴィッドソン(Sir Stanley Davidson)と、レジナルド・パスモア(Reginald Passmore)の2人は、『Human Nutrition and Diabetes』を出版した。この本では、

「人気のある『痩せる方法』は、いずれも炭水化物の摂取を制限するものである」

「炭水化物の多いものを食べ過ぎることこそが、肥満の最大の原因であり、その摂取は徹底的に減らすべきである」

と記述されている。同年、パスモアは、イギリスで出版されている栄養学の雑誌『British Journal of Nutrition』にて、以下の宣言で始まる論文の共著者にもなっている。

「全ての女性は、炭水化物の摂取が身体に脂肪を蓄積させることを知っている。これは1つの常識であり、このことに異議を唱える栄養学者は存在しないであろう」[7]

  • 1958年にはリチャード・マッカーネス(Richard Mackarness, 1916~1996)による著書『Eat Fat and Grow Slim』(『脂肪を食べて細身になろう』)、1960年には英語版(Herman Taller, 1906~1984)による著書『Calories Don't Count』(『カロリーは気にするな』)が出版されており、いずれも炭水化物の摂取制限を奨める内容である。
  • イギリス生理学者栄養学者ジョン・ユドキン(John Yudkin)は、1972年に出版した著書『Pure, White and Deadly』の中で、「肥満や心臓病を惹き起こす犯人は砂糖であり、食べ物に含まれる脂肪分は、これらの病気とは何の関係も無い」と断じている。また、ユドキンは、「砂糖・小麦粉、その他炭水化物の含有量が多いもの全般を禁止する代わりに、肉・魚・卵・緑色野菜は自由に食べてよい」と主張している。

「体重を減らしたいのなら、炭水化物を食事から排除すれば成功する。これを守らなければ、減量は必ず失敗に終わる」

「炭水化物ではなく、タンパク質と脂肪の摂取を減らした場合、常に空腹感が付きまとい、その空腹が減量を失敗に導くであろう」

「炭水化物は人間の食事には必要ない。『必須炭水化物』なるものは存在しない」

と明言している[7]

「ヒトを病気にさせるのは動物性脂肪ではなく、炭水化物である」「今まで言われ続けてきた、『脂肪の摂取を減らしたり、低脂肪な食事をするように』という『伝統的な食事法』[96]は、何の役にも立たないが、炭水化物が少ない食事は肥満患者や糖尿病患者の健康を改善できるだろう」[97]と確信しており、「低脂肪の食事は、長期的に見ても『体重の減少に効果がある』との証明はされておらず、食事のあり方を変えるべきである」との立場を明確にしている[98]2008年にスウェーデンの保険福祉庁とアメリカ糖尿病協会が「炭水化物を制限する食事法は肥満や糖尿病治療に役立つ可能性がある」という評価をくだすも、ある5人のダイエットの専門家がそれを認めなかった。イーエンフェルトはこれに対して大いに疑問視した[99]2009年、イーエンフェルトは、スウェーデンの医療雑誌『Dagens Medicin』に、スウェーデン食糧庁による「動物性脂肪を避けるように」との警告には何の根拠も無いこと、国が推奨している現在の食事内容をただちに変えるべきであるという内容の記事を、12人の著者とともに共同で寄稿した[100]

2011年、イーエンフェルトは著書『Low Carb, High Fat Food Revolution: Advice and Recipes to Improve Your Health and Reduce Your Weight』を出版し、炭水化物を制限する食事法を奨めている[101]。本書は英語で書かれ、スウェーデン本国でベストセラーとなり、8つの言語に翻訳された[102]

  • イングランドの医師ジョン・ブリッファ(John Briffa)は、著書『Escape the Diet Trap』の中で、

「高糖質・低脂肪な食事に体重を減らす効果は無い」

「カロリー制限食は、体重を減らせないだけでなく、深刻な病気を患いやすくなる」

「体脂肪の蓄積を強力に推進する主要因子となるのはインスリンである」

インスリン抵抗性は、肥満および2型糖尿病と密接に関係している」

「インスリン抵抗性は、血糖値の乱高下、トライグリセライド(triglyceride, 中性脂肪値)の上昇で惹き起こされ、体内で発生する炎症作用の原因となり、これらはインスリンの大量分泌を促す食べ物の摂取で惹き起こされる。そのインスリンの大量分泌を惹き起こす食べ物は炭水化物である」

「食事に含まれる脂肪分の摂取と体重の増加には因果関係は無く、『脂肪の摂取を減らせば体重を減らせる』ことを示す証拠は無い」

「84時間に亘って生理食塩水のみの点滴を受け続け、絶食状態にあった被験者と、脂肪分だけを1日2000kcal分供給された被験者の血中の状態は、まったく同じであった」

「炭水化物の摂取を減らし、脂肪の摂取を増やすほど体重も体脂肪も減っていく」

「食べ物に含まれる脂肪分は、インスリンの分泌を全く促さない以上、太る原因にはなり得ない」

「動物性脂肪の摂取と、肥満および心臓病には何の因果関係も無い」

マーガリンのようなトランス脂肪酸は避けること」

「穀物の栄養価は極めて低い。穀物を動物に食べさせると、本来ならあり得ない速度で脂肪が蓄積していく。このことから、穀物は『食料』ではなく、『飼料』と呼ぶべきである」

「『タンパク質の摂取は腎臓に負担をかける』とする説には何の根拠も無い。体重1kgにつき、2.8gのタンパク質を摂取しても、腎機能に悪影響が出ることを示す証拠は見付からなかった」

「タンパク質は骨の原料でもあり、タンパク質の摂取を増やすことで骨折のリスクは低下する」

「タンパク質の摂取もインスリンの分泌を促すが、同時にグルカゴンの分泌も誘発し、インスリンによる脂肪蓄積作用を緩和する」

「食欲を満足させるのに最も効果的な食事と呼べるものは、タンパク質と脂肪が豊富で炭水化物が極めて少ない食事である」

「有酸素運動に体重を減らす効果は無い」

と述べている[103]

食事比較

1956年、アラン・ケクウィック(Alan Kekwick)とガストン・パワン (Gaston Pawan)の2人は、ロンドンにあるミドルセックス病院(the Middlesex Hospital)にて、太り過ぎの患者を以下の3つの食事グループにそれぞれ割り当て、身体がどのような変化を示すのかを確かめる実験を行った。

  1. 摂取カロリーの90%を炭水化物から摂る
  2. 摂取カロリーの90%をタンパク質から摂る
  3. 摂取カロリーの90%を脂肪から摂る

1日の摂取カロリーは、3つとも「1000kcal」に揃えた。それぞれの食事に割り当てられた被験者の体重は以下のように変動した。

  1. の食事を摂ったグループ・・・体重が1日に0.24ポンド(約0.1kg)増加した
  2. の食事を摂ったグループ・・・体重が1日に0.6ポンド(約0.28kg)減少した
  3. の食事を摂ったグループ・・・体重が1日に0.9ポンド(約0.41kg)減少した

炭水化物が少なく、脂肪の摂取量が多い食事を摂ったグループが最も大きく体重を減らす結果となった[104]。さらに、1日の摂取カロリーを「2600kcal」に調節した低糖質・高脂肪食を摂らせたところ、体重は大幅に減少した[105]

A TO Z 減量研究

2003年2月から2005年10月にかけて、『The A TO Z Weight Loss Study』(『A TO Z 減量研究』)と題した研究が行われた[106][107][108]。被験者は肥満体の女性であり、彼女らを以下の4つの食事法に無作為に割り当て、炭水化物が少なく、脂肪が多い食事が、心臓病、糖尿病に関係する危険因子に与える影響について調べたもので、体重、血圧、コレステロール値の変化についても比較した。

  1. The Atkins Diet(アトキンス・ダイエット)・・・炭水化物の1日の摂取量を20g以内、その後は50g以内に抑える。摂取カロリー、タンパク質、脂肪の摂取量は一切制限せず、食べたいだけ食べる
  2. LEARN Diet ・・・ いわゆるカロリー制限食。全摂取エネルギーのうちの55~60%を炭水化物から摂り、脂肪の摂取割合は30%以下にし、飽和脂肪酸の摂取割合は10%以下とする。定期的に運動をこなす
  3. Ornish Diet ・・・ 脂肪の摂取割合を10%以下とする。瞑想と運動を行う
  4. Zone Diet ・・・ 摂取カロリーのうちの40%を炭水化物から、30%をタンパク質から、30%を脂肪から摂取する

1. のアトキンス・ダイエットに割り当てられた被験者たちは、肉や魚を食べたいだけ食べ、それに付随する動物性脂肪を沢山食べるよう指導され、摂取カロリーと脂肪の摂取を減らす食事法に割り当てられた被験者と比較された。その後、アトキンス・ダイエットに割り当てられた被験者たちの身体には、以下の現象が起こった[7]

  • 体重が大幅に減少した
  • 中性脂肪が大幅に減少した
  • 血圧が低下した
  • HDLコレステロールが増加した
  • LDLコレステロールがわずかに増加した
  • 総コレステロール値はほとんど変化なし
  • 心臓発作を起こす危険性は大幅に低下した

これら4つの食事法のうち、最も大きく体重を減らし、血圧や中性脂肪も低下させたのはアトキンス・ダイエットであった。

この研究を主導したスタンフォード大学のクリストファー・D・ガードナー(Christopher D. Gardner)[109]は、肉や脂肪を豊富に含む食事は危険かもしれない、と考えていたが、この研究結果を受けて、「A bitter pill to swallow」(「受け入れがたい現実」)と述べた[7]

過食実験と体格の変化

2013年、イングランド人のサム・フェルサム(Sam Feltham)は、1日に5000kcalを超えるエネルギーを摂取する過食実験を自らの身体で実施した。彼は、「カロリーはカロリーである」(『A calorie is a calorie』)「自分が消費する以上の量のエネルギーを摂取するからヒトは太るのだ」とする理論に対して疑念を抱いていた[110]

最初の21日間で栄養素の構成比を「脂肪53%(461.42g)、タンパク質37%(333.2g)、炭水化物10%(85.2g)」(「低糖質・高脂肪な食事」)に設定し、1日に「5794kcal」のエネルギーを摂取する生活を21日間続けた。21日後、フェルサムの体重は1.3kg増加したが、腰回りは3cm縮んだ。フェルサムの身体からは脂肪が減り、除脂肪体重が増加し、身体は引き締まった[111][112]。この高脂肪食で、フェルサムは余剰分のカロリーが56645kcalにも及んだが、全く太りはしなかった[110]

次に、フェルサムは摂取エネルギーの構成比を「炭水化物64%(892.7g)、タンパク質22%(188.65g)、脂肪14%(140.8g)」(「高糖質・低脂肪な食事」)に変え、1日の摂取エネルギーを「5793kcal」に調節し、再び21日間過ごした。21日後、フェルサムの体重は7.1kg増加し、腰回りは9.25cm膨らみ、顎の脂肪も膨らんでいた[113][114][115][116][117]。なお、この「炭水化物の摂取を増やし、脂肪の摂取を減らす食事」は、アメリカ糖尿病協会(The American Diabetes Association)やアメリカ心臓協会(The American Heart Association)が推奨している「栄養バランスのとれた食事」であり、栄養学の「権威」が推奨する食事とほとんど変わらない[114]。炭水化物が多く、脂肪が少ない食事で体重が大幅に増加したことについて、カナダの腎臓内科医ジェイスン・ファン(Jason Fung)は「カロリー以外の別の要素が働いている」「カロリーよりも遥かに複雑な現象が起こっていることは明白だ」と記述している[114]。この過食実験について、栄養生化学と生理学の研究者、ビル・ラガコス(Bill Lagakos)[118]は「素晴らしい」「カロリーとは単なる道具でしかない」と述べている[119]

もう1つの実験として、フェルサムは「ヴィーガン食」(Vegan Diet, 完全菜食)による過食実験も実施した。ヴィーガン食は基本的に「高糖質・低タンパク・低脂肪」な食事である。1日の摂取エネルギーを「5794kcal」に調節したヴィーガン食で再び21日間過ごした。21日後、フェルサムの体重は4.7kg増加し、腰回りは7.75cm膨らみ、顎の脂肪も膨らみ、体脂肪率は12.9%から15.5%に上昇した[120][121]

フェルサムはこれらの過食実験を通して、

  • 「(脂肪が豊富で炭水化物が少ない食事を摂り続けても太らなかったことについて)簡単に言うなら、『食べ物に含まれる脂肪分には、ヒトを太らせる作用は無い』ということである」
  • 「炭水化物の摂取を増やし、脂肪の摂取を減らしたところで、あなたが食べた炭水化物は体内で脂肪に変わる」
  • 「精製された炭水化物を食べ続けていれば、身体に生化学的な損傷が発生し、インスリン抵抗性を初めとする疾患を惹き起こすだろう」
  • 「体重を管理する方法について、『食べる量を減らして運動量を増やせ』としばしば言われるが、これは誰の何の役にも立たない、愚鈍で疎慢な『助言』である」
  • 「精製された炭水化物のような『偽物の食べ物』ではなく、肉や卵のような『本物の食べ物』を食べよう」
  • 「脂肪が豊富な肉・魚・卵・ナッツ類、緑色野菜は食べたいだけ食べて構わない」
  • 「炭水化物を食べ続けている限り、あなたの身体から脂肪は減らない」
  • 「肥満や病気が蔓延しているのは、人々が『食べ過ぎるから』ではなく、『偽物の食べ物を食べるから』だ」
  • 「医療関係者に言いたいのは、患者に対して『偽物の食べ物』を減らし、『本物の食べ物』を食べるよう促すことだ」
  • 「各国の政府は、食事に関する政策を改め、『偽物の食べ物』を排除し、砂糖会社への補助金を停止すべきである」

と述べている[110]

炭水化物と脂肪、それぞれの摂取と影響

5大陸、18ヶ国に住む135335人を対象に行われた大規模な疫学コホート研究の結果が『The Lancet』にて発表された(2017年)。これは炭水化物の摂取量および脂肪の摂取量と、心血管疾患に罹るリスクおよびその死亡率との関係についての調査であった。これによると、炭水化物の摂取を増やせば増やすほど死亡率は上昇し、脂肪の摂取を増やせば増やすほど死亡率は低下するという結果が示された。とくに、飽和脂肪酸の摂取量が多ければ多いほど、脳卒中に罹るリスクは低下した。また、飽和脂肪酸・不飽和脂肪酸を問わず、脂肪の摂取は死亡率を低下させ、心筋梗塞および心血管疾患の発症とは何の関係も無かった[122][123]

飽和脂肪酸の摂取は、冠状動脈性心臓病、脳卒中、心血管疾患の発症とは何の関係も無く、飽和脂肪酸がこれらの病気と明確に関係していることを示す証拠は無い[124]

また、多価不飽和脂肪酸の摂取量を増やし、飽和脂肪酸の摂取量を減らしても、心血管疾患の発症リスクは減らせない[125]

1960年代以降、「動物性脂肪を豊富に含む動物性食品は、健康に悪影響を及ぼす可能性がある」と言われるようになると、栄養学者たちは、「動物の肉には、生命維持に欠かせない全ての必須アミノ酸、全ての必須脂肪酸、13種類ある必須ビタミンのうちの12種類がたくさん含まれている」という栄養学上の事実の指摘を控えるようになった[7]ビタミンDビタミンB12の両方を含む食べ物は「動物性食品だけ」である[7][126]

砂糖と疾患

砂糖を摂取すると、高確率で肥満になる。砂糖は体内に入ると、血糖値の急上昇および高血糖の長時間の持続、インスリンの大量分泌、インスリン抵抗性、これらを同時に惹き起こす。果糖を投与された動物は、体重の制御ができなくなるだけでなく、摂食行動が止まらなくなり、体重が増えて体も動かさなくなることが動物実験で示された[127]。砂糖の主成分は「ショ糖」(Sucrose)と呼ばれ、これはブドウ糖と果糖で構成される。果糖は、インスリンやレプチンを初めとするホルモンの受容体を破壊し、ホルモン抵抗性を惹き起こし、糖尿病の合併症・内臓脂肪の蓄積・脂肪肝をもたらす直接の原因となる[128]

野生の肉食動物や、狩猟採集生活を送っている集団は、肥満になる可能性は極めて低いが、これは「炭水化物が多いもの・糖分・砂糖を摂取する機会がほぼ皆無であるから」である。

英語圏においては、『Sugar Addiction』(『砂糖中毒』『砂糖依存症』)という言い方が広まっており、「砂糖に対する欲求や、砂糖を多く含んだものが止められないという砂糖に対する渇望感は、中毒症状の一種であり、その中毒症状を惹き起こすのは砂糖である」という見方が広まっている。アメリカ合衆国の歯科医師ウェストン・プライス(Weston Price)は、狩猟採集生活を送っている集団の食生活についての研究をまとめた報告書『食生活と身体の退化―先住民の伝統食と近代食その身体への驚くべき影響』(1939年)の中で、「砂糖を食べるようになってから、虫歯を患ったり、栄養不足に伴う病気が増えた」と述べている。クイーン・エリザベス大学の栄養学教授、ジョン・ユドキン(John Yudkin)は、著書『Pure, White and Deadly』(1972年)の中で、「肥満や心臓病を惹き起こす犯人は砂糖であり、食べ物に含まれる脂肪分は、これらの病気とは何の関係も無い」と断じている。1960年代、ユドキンはミネソタ大学の生理学者アンセル・キース(Ancel Keys)と、「砂糖・脂肪論争」を繰り広げた。この論争では、「心臓病を惹き起こす原因は(食べ物に含まれる)脂肪分にある」というキースの主張が通り、ユドキンの「砂糖が原因である」との主張は通らなかった。1970年代後半、アメリカ合衆国政府は「脂肪の摂取を減らし、炭水化物の摂取を増やせ」と国民に呼びかけたが、肥満・糖尿病・心臓病を患う国民の数は増加の一途を辿るようになった。

ユドキンの主張を支持する者の1人として、カリフォルニア大学神経内分泌学者ロバート・ラスティグ(Robert Lustig)がおり、カリフォルニア大学が製作・公開したラスティグによる講演『Sugar: The Bitter Truth』の中で、「砂糖は毒物であり、ヒトを肥満にさせ、病気にさせる」「砂糖の含有量が多いものには課税すべきだ」と断じており[129]、著書『Fat Chance』の中でもそのように主張している。また、「砂糖はカロリーがあるだけで栄養価は皆無であり、肥満をもたらすだけでなく、タバコアルコールと同じように中毒性が強く、含有する成分の果糖が内分泌系に悪影響を与え、心臓病や心臓発作、2型糖尿病を発症するリスクを高める」として、「砂糖の含有量が多いものには課税すべきである」との主張を科学雑誌ネイチャー誌(『Nature』)に発表した[130]

ゲアリー・タウブスは、2016年に出版した著書『The Case Against Sugar』(『砂糖に対する有罪判決』)の中で、「砂糖は『中毒性の強い薬物の一種』であり、ヒトを肥満にさせるだけでなく、心疾患の原因でもあり、健康を脅かす」「肥満とは、身体がホルモン障害を惹き起こした結果であり、そのスイッチを入れるのは砂糖である」と断じている[131]。また、「砂糖は肥満、糖尿病、心臓病、メタボリック症候群を引き起こす原因であり、これにはインスリン抵抗性が関わっている」「砂糖はインスリン抵抗性の直接の原因となる」「インスリン抵抗性は癌の原因となる」と断じている[132]

ジェイスン・ファンも、「砂糖の摂取は、血糖値および血中のインスリン濃度を速やかに急上昇させ、その状態を長時間に亘って持続させ、さらにはインスリン抵抗性をも同時に惹き起こす」「砂糖や人工甘味料は、インスリン抵抗性を惹き起こす直接の原因となる」「『どれくらいの量なら砂糖を摂取してもいいか』というのは、『どれくらいの量ならタバコを吸ってもいいのか』という質問と同じである」「砂糖を食べると太る。この事実に異を唱える者はいないだろう」「太りたくない、体重を減らしたいのなら、真っ先にやるべきなのは、糖分を厳しく制限することである」と断じている[133]

砂糖の毒性

  • 果糖を摂取した時の血糖値の上昇は、ブドウ糖を摂取した時に比べて緩やかではあるが、肝臓が果糖をすべて脂肪に変えて内臓脂肪として蓄積させる。「果糖を代謝できるのは、人体の中では肝臓だけ」であるため[134]。肝臓が炭水化物を材料にして脂肪を合成する過程は「脂肪生成」(De Novo Lipogenesis, 「De Novo」はラテン語で「再び」「もう一度」の意)と呼ばれる[135]。果糖を摂取し続けることで肝細胞に脂肪が蓄積していき、飲酒の習慣が無い人間でも脂肪肝を患う。脂肪肝を患って間もない時点ではまだ治る余地はあるが、進行すると炎症を起こして肝炎が発生し、最終的には肝硬変を惹き起こす[134]。カリフォルニア大学のロバート・ラスティグも「砂糖は脂肪肝の原因になる」と主張している[136]。また、ラスティグは果糖を「Alcohol Without the Buzz」(「酔わせる作用の無いアルコール」)と表現している[137]
  • 砂糖・果糖はほんの僅かな期間で肝臓に脂肪を有意に蓄積させる[138]
  • 砂糖・果糖は中性脂肪(Triglyceride)を有意に増加させ[139][140][141]、空腹時の脂肪酸の酸化を低下させる(脂肪の燃焼を抑制・妨害し、身体から脂肪が減らない)[142]
  • 砂糖の摂取は、中性脂肪の数値を高め、高血圧を惹き起こし、内臓脂肪の蓄積を促し、インスリン抵抗性糖尿病メタボリック症候群を惹き起こす。砂糖を摂取し続けることで脂肪肝を患うと、心血管疾患を惹き起こして死亡する確率が上昇する[134]
  • 砂糖を摂取することで、体内でAGEsAdvanced Glycation End Products, 「最終糖化産物」と呼ばれる)が作られやすくなる。これは身体の老化を強力に促進する物体で、タンパク質に糖が結合することでタンパク質が変性する。AGEsができやすくなる確率は、ブドウ糖を摂取した際の10倍にまでなる[143]
  • 砂糖および果糖はを低下させ、内臓脂肪の蓄積を促進し、空腹時の血糖値インスリンの濃度を上昇させ[144]、肝臓に脂肪を蓄積させ、ミトコンドリアの機能を妨害し、炎症の誘発を刺激し[145]脂質異常症インスリン抵抗性を惹き起こし、糖尿病発症を促進する[146]
  • 砂糖および果糖の摂取は痛風を惹き起こす[147][148]。心疾患、痛風、メタボリック症候群に砂糖が関わっていることは以前から知られていた[149]
  • 砂糖・果糖は衝動性と攻撃性を増加させ、多動性の採餌反応、双極性障害注意欠陥・多動性障害を惹き起こし、さらには鬱病の原因にもなる可能性がある[150]
  • 砂糖は膵臓癌[151] を初めとする各種の癌を患う可能性を高める。これの摂取を断つことが、癌の予防や治療への取り組みとなりうることを示唆している[152]
  • 砂糖および果糖は脳においてもインスリン抵抗性を惹き起こし、脳の神経組織を破壊し、アルツハイマー病を惹き起こす[153][154]
  • 砂糖および果糖は「虫歯の大いなる原因である」と結論付けられている[155][156]。砂糖が入っている飲み物の販売の禁止、砂糖の摂取に対する警告ラベルの商品への貼り付け、砂糖税の導入は、砂糖の摂取を減らせる取り組みとなりうる[156]
  • 砂糖の摂取を減らすことで、脂肪肝、肥満、各種疾患を防げる可能性がある[157]
  • 砂糖および果糖の摂取は肝臓への脂肪の蓄積を促すが、炭水化物および砂糖が少ない食事を摂ると、蓄積した脂肪が急速に減少することが確認された。外部からの資金提供を受けることなく書かれた研究論文の著者は、「身体の健康を守るために砂糖の摂取を制限すべきである」と結論付けている[158]

1775年イングランドの医師で生理学者、マテュー・ドブスン(Matthew Dobson)は、糖尿病患者の尿が甘いこと、その甘みの物質の正体は砂糖であることを突き止めた。1776年、ドブスンは自身の臨床経験について発表した[159][160]スコットランド出身の軍医、ジョン・ロロ(John Rollo)はドブスンの研究を参考に、糖尿病患者のための食事療法を考案し、糖尿病を患っていた陸軍将校2人に、肉と脂肪が多く、炭水化物が少ない食事を処方した[161]。ロロは、「糖尿病を治療するにあたって炭水化物が少ない食事を奨励した最初の人物である」と説明されている[162]1797年、ロロは『An Account of Two Cases of the Diabetes Mellitus』(『糖尿病における2つの症例の説明について』)を出版した[163]。2つの事例のうちの1つでは、この食事を処方された結果、232ポンド(約105㎏)あった体重が減少し、症状が解消され、血糖値と尿糖の濃度が低下したという[161]

炭水化物と高血糖

空腹時においても持続する高血糖症を慢性高血糖症と呼ぶ。高血糖を惹き起こす最も一般的な原因は、炭水化物の消費にある[29]

炭水化物を食べて高血糖になり、そのたびにインスリンを注射する、というのを繰り返していると、さまざまな合併症や癌を患う危険性が上昇し、インスリンの強制的な注射やインスリンの強制分泌を促進する薬物の服用は、身体に深刻な不利益をもたらす[164]。インスリン療法を受けている患者は、インスリン療法を受けていない患者に比べて、心血管疾患(Cardiovascular disease)で死亡する危険性が上昇する[165]。さらに、インスリンで高血糖を抑え込もうとすると、心血管疾患の発症率は低下せず、死亡率は上昇する。体重については、インスリンを注射していただけで10㎏以上も増加した[166]

血糖値が正常範囲内(90~99)であっても、血糖値が90未満の人間と比較すると、膵臓癌の累積発生率は有意に増加し[167]、空腹時の血糖値が110を超えると、あらゆる癌で死亡する確率が有意に上昇する[168]。「GLUT5」と呼ばれる果糖輸送体は乳癌の発生に関わっている[169]

たとえ運動していても、炭水化物を食べている限り高血糖は防げず、インスリン感受性は運動を終えた途端に低下する(インスリン抵抗性が高くなる)[170]。インスリン抵抗性は運動では防げない。

「インスリン感受性が低い」ということは、「インスリン抵抗性が高い」(インスリンの効き目が悪い)状態を意味する[171]

インスリンと肥満

「インスリンがヒトを太らせる」

体重を目標もしくはそれ以下まで落としたものの、その後再び体重が増えてダイエット開始前と同じ体重に戻ったり、以前よりも体脂肪率が増加する。これは俗にリバウンドと呼ばれている。減量とリバウンドを繰り返すと、痩せにくく、太りやすい状態となる。

体重のリバウンド現象については、インスリンおよびインスリン抵抗性が原因と考えられている。ジェイスン・ファンは、「リバウンドとは、インスリンが設定した体重に戻ろうとすること」と述べている。「体重の『設定値』を決めるのはこのインスリンであり、インスリンが過剰に分泌される状態およびインスリン抵抗性が続くと、インスリンが『体重の設定値のつまみを回す』。こうなると、何をどうしようとも、身体はインスリンが設定した体重に戻ろうとする」「体重のリバウンドが起こるのは、あなたの意志が弱いわけでも、努力が足りないわけでもない。インスリンがその人の体重を決める」という[133]。また、身体活動および運動の効果に対しても、「体重を減らすことを目的に、食べる量を減らして運動をする習慣を付ける実験は、いずれも例外なく失敗に終わっている」「どれだけ運動を頑張ってこなし、食べる量を減らしたところで体重を減らす効果は無いことは証明済みである」「運動する人に比べて、運動しない人ほど痩せている[133]と結論付けている。「やろうと思えば誰でも太らせることが可能だ。インスリンを注射するだけでいい。インスリン濃度が高い状態が続く限り、どんどん太り続ける。何をどうしようとも無駄である」と述べ、「『肥満ホルモン』ことインスリンがヒトを太らせる」と結論付けている[133]。炭水化物の摂取制限を奨める人物も全員例外なく、「インスリンが出るから太る」という結論で一致しており、「過食や運動不足は肥満の原因ではなく、あくまで『結果』でしかない(「身体が太って脂肪が蓄積したあとに、過食したり、動かなくなる」)」と断じている。

インスリノーマ(Insulinoma)と呼ばれる腫瘍があり、これはインスリンの大量分泌を促す作用がある。インスリノーマにおいては、体重が一方的に増加し続ける[172][173][174][175][176][177][178][179][180]。2年間で体重が37㎏も増加した症例がある[181]。体重の一方的な増加は、インスリンの過剰分泌が原因である[182]

インスリノーマにおいては、低血糖症およびそれに伴う形で、高インスリン血症、鬱病、めまい、意識喪失、てんかん発作、意識障害、脳卒中様症状、神経障害といった神経学的症状までも惹き起こされる。インスリノーマにおいては、高インスリン血症に伴う形で、頭痛、複視、かすみ目、錯乱、異常行動、嗜眠、健忘症、発作、昏睡、発汗、脱力感、空腹感、振戦、吐き気、熱、不安、動悸がみられる[182]

膵臓内分泌腫瘍(Pancreatic Endocrine Tumors)における最大のものがインスリノーマであり、そのうちの10%は多発性であり[174]、悪性である[175][183]

インスリノーマの最適な治療法は外科手術による切除であり[172][173][177][184][185]、取り除くことで寛解する[172][173][184]。インスリノーマを切除したあとの患者は低血糖症が無くなり、体重は大幅に減少する[172][179][184]が、切除したあとでも再発するリスクはある[177]。インスリノーマの切除に成功した最初の症例が報告されたのは1929年のことである[177]

インスリノーマは、内因性高インスリン症に関連する低血糖症の最も一般的な原因である[185]。長時間絶食することにより、内因性高インスリン症を検出し、再発性低血糖の原因として不適切な形で上昇したインスリンの分泌を検出できる手段となる[185]

インスリンの濃度が高い状態では、身体は一方的に太り続けていく。これは、その人がどれぐらい食べたか、運動していたかどうかは、何の関係も無い。

脂肪異栄養症

脂肪異栄養症」(Lipodystrophy)と呼ばれる症状があり、その中でも稀に発生する「進行性脂肪異栄養症」(Progressive Lipodystrophy)と呼ばれる症状がある。この症例は1950年代半ばまでに約200例報告されており、その大部分は女性である。これは上半身の皮下脂肪がほぼ消失する代わりに、腰から下の部位に脂肪が異常に蓄積する[7]1931年にこの症例が報告されたある女性の身体においては、10歳の時に顔の脂肪が減り始め、13歳の時に脂肪の消失が腰の括れ部分で止まった。その2年後、そこから下に向かって脂肪の蓄積が始まった。彼女の体脂肪は事実上、腰から下に集中しており、上半身は痩せている代わりに腰から下が異常に太っていた。ゲアリー・タウブスはこの脂肪異栄養症を取り上げたうえで、「カロリー理論によれば『太るのは食べすぎるからだ。食べる量を減らせば痩せられる』というなら、この女性の上半身から脂肪が減ったのは食べる量を減らしたからであり、腰から下に脂肪が蓄積したのは食べ過ぎたからだ』ということになるのか?明らかに馬鹿げた話だ」とカロリー理論を公然と批判している[7]。脂肪組織において調節障害が発生し、身体の一部の脂肪が肥大していくこの症状は、インスリン療法の一環としてインスリンを注射している際に発生する最も一般的な合併症の一つであり[186]、有害な免疫学的副作用であり、重大な問題である[187]

インスリンは脂肪分解を抑制・妨害する

インスリンは脂肪の合成と貯蔵を促進し、体内における脂肪分解を徹底的に抑制・阻害する最大のホルモンである[188][189][190][191]

インスリンは脂肪の蓄積を強力に促進し、空腹感を高め、体重増加を惹き起こす。たとえカロリーを制限したところで、インスリンを注射された動物には過剰な量の体脂肪が蓄積する[6]

インスリンの分泌を高める食事は、インスリンを注射した時と同様の作用をもたらす[6]

インスリンは、細胞へのブドウ糖の取り込みを促進し、脂肪細胞からの脂肪酸の放出を抑制・妨害し、肝臓でのケトン体の産生を抑制し、脂肪の沈着を促進し、主要な代謝燃料の循環濃度までも低下させる[6]

肥満における危険因子には、高インスリン血症(Hyperinsulinemia)が関わっている。インスリンの濃度が正常より高い場合や、インスリンの濃度がほんのわずかに上昇するだけで肥満は惹き起こされる。インスリンの分泌を阻害する薬物を投与するか、インスリンの濃度が低下すると体重は減少する[6][192]。脂肪分解を抑制・妨害する作用は、インスリンにおける最も敏感な代謝作用である。空腹時でもインスリンの濃度がわずかに上昇すると、脂肪細胞における脂肪分解作業は阻害される[192]。細胞へのブドウ糖の取り込みを刺激するには、通常の6倍のインスリン濃度が必要になり、肝臓における糖新生(Gluconeogenesis)を抑制するには、インスリンの濃度が2倍になるだけで十分である[192]

脂肪細胞が満杯になってしまう場合に備えて、新しく脂肪を貯蔵する場所を確保するため、インスリンは脂肪細胞を新しく作るよう信号を送る[7]

17歳の時に1型糖尿病を発症したある女性は、その後47年間に亘って太ももにある2か所の部分に、毎日インスリンを注射し続けた。彼女の太ももには、マスクメロン大の脂肪の塊ができあがった。これは、「彼女が何をどの程度食べたか」とは何の関係も無く、「インスリンによる脂肪生成作用」に他ならない。全身のインスリン濃度が上昇している時にも、同じ現象が起こる。糖尿病患者がインスリン療法を受けるとしばしば肥満になるのは、これが理由である。『ジョスリン糖尿病学』(『Joslin's Diabetes Mellitus』)には、「It results from the direct lipogenic effect of insulin on adipose tissue, independent of food intake」(「食べ物の摂取とは何の関係も無い、脂肪組織に対するインスリンによる直接的な脂肪生成作用の結果である」)と説明されている[7]

食後の血糖値の上昇とインスリンの分泌を最も強力に促進するのは炭水化物である[84]。タンパク質もインスリンの分泌を刺激するが、インスリンと拮抗する異化ホルモン、グルカゴン(Glucagon)の分泌も誘発する。一方、食べ物に含まれる脂肪分は、インスリンの分泌にほとんど影響を与えない。この生理学的な事実は、低糖質・高脂肪食が人体に有益であることを示す理論的根拠となる[6]

ハーバード大学の元医学部長ジョージ・F・ケイヒル・ジュニア(en:George F. Cahill Jr.)は、

Carbohydrates is driving insulin is driving fat.」(「脂肪を操るインスリンを、炭水化物が操る」)[7]との言葉を残している。

肥満、インスリン抵抗性、メタボリック症候群、2型糖尿病を患っている患者が、炭水化物の摂取を制限し、脂肪に置き換えて食べると、最大限の効果が得られる可能性がある[193]。さらに、84時間に亘って絶食状態にあった被験者と、84時間に亘って脂肪「だけ」を摂取し続けた被験者の血中の状態は「全く同じ」であった。双方とも、血糖値とインスリンの濃度は低下し、遊離脂肪酸とケトン体の濃度、脂肪分解の速度がいずれも上昇した[194]

体重を減らしたい人、心血管疾患の危険因子を減らしたい人にとって、炭水化物が少なく、脂肪(トランス脂肪酸を除く全ての脂肪。飽和脂肪酸一価不飽和脂肪酸多価不飽和脂肪酸)が多い食事はその選択肢となりうる[83]

1日を通して、インスリンの濃度が高い状態を避けることは、脂肪の蓄積を防ぐという意味でも大いに有効である。断食も有効な手段となりうる[192]

リパーゼ、インスリン、脂肪分解と脂肪蓄積

1970年代初期、マサチューセッツ大学のジョージ・ウェイド(George Wade)は、雌のラットから卵巣を摘出し、そのラットの行動を観察し、性ホルモン、体重、および食欲の関係について研究を始めた。卵巣を摘出されたラットは餌をがつがつと食べ始め、瞬く間に肥満になった。ラットは過食し、その身体には過剰な脂肪が蓄積した(第1の実験)。その後、ウェイドは卵巣を摘出したラットに厳格な食餌制限を行った。このラットが激しい空腹を覚えて何かを食べたくてたまらなくなったとしても、その衝動を満たせない食餌制限を実施した(第2の実験)。その結果、ラットは好きなだけ餌を与えられた時と同じく、すみやかに肥満体になっただけであった。このラットは完全に動かなくなり、食べ物を得る必要がある時にだけ、動くようになった。 ラットの卵巣を摘出したことにより、ラットの脂肪組織は循環する血液から脂肪を蓄えた。一方、自由に餌を食べることも許されない時、ラットは使えるエネルギーが少ない以上、消費エネルギーを減らそうとしてその場でじっとしたまま動かなくなった(第2の実験)。これについてウェイドは「ラットは過食したから太ったのではなく、太りつつあるから過食した」と説明した[7]

ラットの卵巣を摘出するというのは、卵巣から分泌される女性ホルモンエストロゲン(Estrogen)を除去することと同義である。卵巣を摘出したラットにエストロゲンを注射したところ、このラットは餌をがつがつと食べることは無く、肥満にもならなかった。卵巣を摘出したラットが過食する衝動に駆られたのは、身体を動かすのに必要なカロリーを脂肪細胞が次々に取り込んだことで、身体がエネルギー不足に陥ったためである。脂肪細胞がカロリーを取り込んで隔離すればするほど、ラットはエネルギーを補給しようとして食べる量を増やす。だが、脂肪細胞がカロリーを取り込み続ける限り、他の細胞に行き渡らせるだけの十分なカロリーが不足し、ラットは太り、飢え、空腹を満たせなければ、エネルギーの消費を減らす(動かなくなる)ことで解決しようとする。

エストロゲンは、LPL(Lipoprotein Lipase, リポプロテイン・リパーゼ)という酵素に対して、ある働きかけを行う。LPLは、脂肪組織、骨格筋、心筋、乳腺を含む多くの末梢組織の表面に発現し、血中を流れる脂肪を細胞内に送り込む役割がある[195]。LPLが脂肪細胞の表面に発現している時、血中の脂肪を脂肪細胞が取り込む。一方、LPLが筋肉細胞に発現している時、脂肪は筋肉細胞に取り込まれ、筋肉はそれを燃料として消費する。エストロゲンには、脂肪細胞にあるLPLの活動を抑制・阻害する作用がある。細胞の周辺にエストロゲンが増えると、LPLの活性が低下し、脂肪が蓄積されにくくなる。逆に、このラットの実験のように卵巣を摘出することでエストロゲンが分泌されなくなると、脂肪細胞におけるLPLが活性化する。LPLは、そこでいつもの仕事をする(脂肪を脂肪細胞に取り込む)が、脂肪を蓄積させる役割を持つLPLを妨害するエストロゲンが無いために、脂肪細胞には大量のLPLが発現し、そのせいで脂肪が脂肪細胞に次々に取り込まれ、ラットは肥満体となった。ラットから卵巣を摘出したことで、エストロゲンは分泌されなくなり、ラットは通常以上に太っていった。ヒトにおいても、卵巣を摘出したあとや、閉経後の女性の多くは肥満になるが、その理由は、彼女らの体内でエストロゲンの分泌量が減り、その脂肪細胞にLPLが大量に発現するからである[7]

ラットを肥満から解放する方法はただ1つ、エストロゲンをラットに戻すことである。さすればラットは再び痩せるうえに、食欲も食べる量も正常に戻る。動物たちに食餌制限と運動を強いたところで無駄であり、彼らが肥満になるのを防ぐことはできない[7]

脂肪組織における脂肪の蓄積と減少には、インスリンのほかに、複数の酵素と複数のホルモンが関わっている[195][196][197][198][199][200][201][202][203]

ヒトを含めたすべての生物は、エネルギー基質や信号伝達の前駆体として、脂肪酸(Fatty Acids)を燃料にしている。脂肪酸を輸送および保存する際には、中性脂肪(Triglyceride)という分子の形で行われる。だが、中性脂肪はそのままの大きさでは細胞膜を通過できず、細胞への出入りが行われる際にはリパーゼ(Lipase)による作用で分解されなければならない。この生化学的過程を「脂肪分解」(Lipolysis)と呼ぶ[204]膵臓から分泌される膵液には脂肪分解作用があり、これは食べ物に含まれる脂肪分をが取り込む際に欠かせないものである[204]

LPLは、体内の脂肪の蓄積や脂肪の分解を制御する重要な酵素の一種である。脂肪組織、骨格筋、心筋、乳腺を含む多くの末梢組織の表面に発現し、血中から脂肪を細胞内に送り込む役割を持ち、この酵素を調節するのはインスリンである[195]。インスリンは「脂肪代謝における主要な調節器」であり、同時にLPL活性化の調節器でもあり、脂肪細胞におけるLPLの活性化を促す。インスリンが分泌されればされるほど脂肪細胞におけるLPLの活性化はますます強まり、血中から多くの脂肪が脂肪細胞に流入していく。さらに、インスリンは筋肉細胞におけるLPLを抑制し、それによって筋肉が脂肪酸を燃料に使うこともできなくなる。脂肪細胞から脂肪酸が放出されようという時にインスリンの濃度が高ければ、これらの脂肪酸は筋肉細胞には取り込まれず、燃料として消費されることも無く、インスリンによって脂肪細胞に再び押し戻される[7]

LPLは、脂肪細胞における脂肪の蓄積に関わっている。肥満体においては、この酵素の活性化が、肝臓における脂肪生成ならびに高インスリン血症の増加に関係している。炭水化物の慢性的な消費が、この酵素の活性化の漸進的な上昇および脂肪細胞の肥大を促進することが分かっている[198]

脂肪細胞の表面にあるLPLの活性化が失われ、筋肉細胞の表面にあるLPLが活性化すると、蓄積した脂肪が減少する[196]

ヒトが運動をしている間、LPLの活性化は脂肪細胞内で低下し、筋肉細胞内で活性化が上昇する。これは脂肪細胞から脂肪が放出されるのを促進し、燃料を必要とする筋肉細胞で消費される。しかし、運動を終えた途端、この状況は逆転する。筋肉細胞におけるLPLの活性化は失われ、脂肪細胞内のLPLの活性化が急上昇し、脂肪細胞は運動中に失われた脂肪を補充しようとし、再び太る。これは、運動がヒトを空腹にさせる理由でもある。運動を終えると、筋肉はその補充と修復のためにタンパク質を必要とするのに加えて、脂肪の補充も積極的に行う。身体の他の部分は、運動によって身体から流出したエネルギーを補充しようとし、その作用で食欲が増す[7]

すなわち、運動をすると、その最中に少しは脂肪が減り、その分だけ痩せるが、運動を終えた途端、(運動中に失われた分の脂肪が)またもや体内に復活するようにできている[7]。「運動をしても痩せない、肥満を防げないのはなぜか?」というのは、これで説明が付く。

男と女で太り方がそれぞれ異なるのは、LPLの分布が異なり、それに付随して分泌されるホルモンの影響もそれぞれ異なるためである[7]

ATGL(Adipose Triglyceride Lipase, 脂肪組織中性脂肪リパーゼ)は、脂肪細胞における脂肪分解の(Rate-Limiting Enzyme)である。脂肪分解過程の触媒となる別の酵素としてHSL(Hormone Sensitive Lipase, ホルモン感受性リパーゼ)の存在があり、インスリンはこれらの酵素も調節する。ATGLは、遊離脂肪酸(Free Fatty Acids)を除去してジアシルグリセロール(Diacylglycerol)を生成することで脂肪分解を開始し、HSLがそれを加水分解する(グリセロールと脂肪酸に分解する)[205]

インスリンは、LPLだけでなく、HSLにも影響を及ぼす。HSLは、脂肪細胞にて中性脂肪を脂肪酸に分解し、それが血液循環に流れ出るよう促す。この時、脂肪細胞内の脂肪が減少する。HSLの活性化が高ければ高いほど、脂肪細胞からより多くの脂肪酸が放出され、身体はそれを燃料にして消費し、貯蔵されている脂肪の量が減っていく。インスリンはこのHSLの働きを抑制し、脂肪細胞内の中性脂肪の分解を妨害し、脂肪細胞からの脂肪酸の流出を最小限に抑える。インスリンはほんのわずかな量でHSLの働きを抑制し、インスリンの濃度がわずかでも上昇すると、脂肪細胞内に脂肪が蓄積していく[7]

HSLは、脂肪細胞における脂肪分解だけでなく、ステロイドの産生や精子の形成にも関わる重要な酵素である[206]。HSLが欠損すると、脂肪組織の萎縮、炎症が起こり、インスリン抵抗性が全身に惹き起こされ、脂肪肝の発症を促進する[197]

ATGLとHSLの活性化は、絶食している時にWAT(White Adipose Tissue, 白色脂肪組織)で強力に上方調節された(有意に増加した)。同時に、血漿遊離脂肪酸の比率も増加し、空腹時や絶食状態になると脂肪分解率の上昇が確認された[207]

成長ホルモン(Growth Hormone)には、蓄積した脂肪の減少を促す作用がある。成長ホルモンは中性脂肪の分解を刺激し、LPLを阻害することにより、体重と体脂肪の減少が促進される。HSLの活性化は、体重減少に伴って大幅に強化される[199]。インスリンはLPLを活性化させ、HSLの作用を抑制するが、成長ホルモンはインスリンによる脂肪生成作用を低下させ、脂肪組織における脂肪の貯蔵と蓄積を抑制・阻害する。高脂肪食を組み合わせることで、中性脂肪の数値も改善される[200]

インスリンを除く全てのホルモンはHSLを刺激することで中性脂肪の分解を促進するが、HSLはインスリン感受性が非常に高く、インスリンを除く全てのホルモンには、インスリンによる脂肪蓄積作用を上回る力が無い。インスリン以外のホルモンによる脂肪細胞からの脂肪酸の放出が可能となるのは、インスリンの濃度が低い時だけである[7]

1965年、医学物理学者のロザリン・サスマン・ヤロウ(Rosalyn Sussman Yalow)と、医師で化学者のソロモン・アーロン・バーソン(en:Solomon Aaron Berson)の2人は、「脂肪を脂肪細胞から放出させ、それをエネルギーにして消費する」ためには、「Requires only the negative stimulus of insulin deficiency.」(「『インスリン不足』という負の刺激以外は必要ない」)と明言した[7]

断食と肥満治療

ジェイスン・ファンは「血中のインスリン濃度が低い状態を維持することにより、インスリン抵抗性と肥満を治療し、安定して体重を減らす」手段について、「間欠的に行う断食」(Intermittent fasting)を推奨している[133][208][209]

また、断食を382日間続け、456ポンド(約207㎏)あった体重を180ポンド(約82㎏)まで減らし、最終的に276ポンド(約125㎏)の減量に成功したスコットランド人、アンガス・バルビエーリ(Angus Barbieri)がいる。バルビエーリは一切の固形物を摂取することなく、水、茶、ブラックコーヒー、ビタミンとミネラルのみで生活することで、自分で肥満を治療した。バルビエーリが行った断食は、1971年版のギネスブックにも登録されている[210][211]

BMI

減量するべき場合と、するべきでない場合とがある。

あくまで目安ではあるが、BMIBody Mass Index, ボディマス指数と呼ばれる)の数値を見て判断する。BMIにより、「普通体重」と判定される範囲(18.5以上 ~ 25未満)であれば、体重の増減に囚われる心配は無用である。BMIによって「肥満」と判定された場合、とくにその数値がより高ければ高いほど(「肥満度数 2」と比較して「肥満度数 3」、「3」と比較して「肥満度数 4」)、「減量を推進すべき」とみなされやすい。

BMIの数値が「18.5未満」の人の場合は「痩せすぎ」と判定され、その場合、それ以上体重を減らしてはいけない。見るからに異様に痩せているにもかかわらず、それでも減量を続行しようとして病気を患ったり、命を落とした事例もある(後述)。

手術

痩身を目的とした手術には以下のものがある。

  • 美容整形のうちの一つとして皮下脂肪を切除したり、吸引する(脂肪吸引)。
  • レーザーや注射で脂肪を融解して、老廃物と一緒に体外に排出する(脂肪融解レーザー)。
  • 「食べる量そのものを減らすことで体重を減らす」ことを期待し、胃の一部を縛ったり、切除するといったが、病的な肥満体の患者に行われることがある。
    • (sleeve gastrectomy:SG)

なお、既述のとおり、「食べる量を減らしたところで痩せはしない」うえに、手術の結果次第では命を落とす場合もあり、非常に危険な手段となる。

痩せ薬

どうすれば痩せ、どうすれば太るのかを知らない人につけこんで、痩身にも減量にも何の役にも立たない商品やサービスを売りつける業者も存在する[4]アメリカ合衆国を例に挙げると、その市場規模は約330億ドルだという[212]。しかも、少女らによる減量目的のステロイド剤の使用が社会問題と化している。2005年に行われた報告によれば、女子高校生のおおよそ5%、女子中学生のおおよそ7%が、少なくとも一度はステロイド剤を使用した経験があるという[213]

種類

「痩せ薬」とされているものについては、以下の種類がある。

事例

ヨーロッパ各国で使われていたものとしてフェンフルラミンがある。脳内にあるセロトニン受容体に直接作用してセロトニンの濃度を高めることにより、食欲を抑制する作用がある。アメリカ合衆国では1996年に許可が下り、市場に出回った。しかし、その翌年に心臓弁膜症肺高血圧を誘発する危険性を指摘されたことで、FDAの要請に基づいて市場から回収された。日本でも、このフェンフルラミンや甲状腺ホルモンの混入した健康食品が、インターネットや口コミを通じて出回り、重大な健康被害を引き起こす例が多発して社会問題になった(2002年)。

EMEAやFDA、厚生労働省が承認した痩せ薬の多くは中枢神経に作用する薬物であり、日本においては本来は医師が処方するものである。日本で承認されているマジンドール処方箋医薬品であるが、これ以外の薬物は承認されておらず、その適応基準は厳格に設定されている。

EMEAあるいはFDAに認可されている痩せ薬は、BMI≧30の高度肥満症であるか、BMI≧27でかつ2型糖尿病や脂質代謝障害のような疾患を有している人が投与対象である[214][215][216][217]。日本における投与についてはBMI≧35か、70%以上の肥満度の高度肥満症であること(マジンドールの適用基準)が前提となっており、一段と厳しい基準を課している[218]

宣伝を行う業者

いずれも痩身効果が医学的に証明されたことはない。TVインターネットでしばしば紹介される減量法は、いずれも何の根拠も無いものであったり、実験データを捏造したり、不十分であったりして、健康被害が発生した例が報告されている[219])。

1. サプリメントを服用することにより、結果として食事の内容や量、バランスを変化させたのと同様の効果を期待するというもの。その類のサプリメントには、

  • 「通常の食事の代わりに服用して満腹中枢を刺激する(結果として摂食量の減少が期待できる)」と宣伝するもの
  • 「食事中に含まれる、熱量となる栄養素の一部吸収を阻害する」と宣伝するもの

が多い。

2. 「脂肪に対して物理的な刺激を加えることで体の一部を細くする(→「部分痩せ」)」というもの

  • 利用される方法は(「サウナスーツ」。 発汗作用により、一時的に体重を減らす)、高周波振動(電動式痩身ローラー・ベルト)、低周波振動(マッサージ器)、磁力 etc.
  • エステティックサロンなどで行われているマッサージによる「脂肪のもみ出し」 ・・・ これは脂肪の流動性を高める、あるいは脂肪細胞を破壊し血中に溶出させ脂肪量を減少させる、というもの。だが、脂肪細胞といえどあくまで他組織と密接に関係する生体組織であり、マッサージを受けることで温度が上昇し、一時的に柔らかくなることはあっても流動性が高くなったり移動したりするものではない(そのようなことで移動していては脂肪細胞のほとんどすべてが足に集まってしまう)。また、マッサージで実際に脂肪細胞を破壊するような力を加えたならば、周辺組織の破壊を伴う重傷を負うであろう
  • 補正下着ガードルボディスーツ) ・・・ 細身の外見に見せることが可能。だが、痩身効果や体型の補正効果が医学的に示されたことは1度もない。マルチ商法ネットワークビジネスで販売されることが多い

なお、これらはいずれも減量の効果は一切無い。

器具

電気刺激を発する器具を腹部に巻いたり、張り付けて腹部の筋肉を鍛え、痩身効果を得ると宣伝する手法がある。消費者庁は、これらの器具を販売する各社に資料提出を求めて効果を調査した。2020年3月31日、4つの販売会社に対して、 痩身効果についての合理的な根拠がない」として、景品表示法違反(優良誤認)の名目で再発防止を命じる措置命令を出した[220]

詐欺

どうすれば太るのか、どうすれば痩せるのかを知らない人に付けこむ形で、健康被害や詐欺の事例がしばしば発生する。例として、以下のようなものがあげられる。

  • 副作用が強い薬や、有害な成分を含む食べ物
  • 期待される効果やサービスの内容に対して著しく料金が高額なもの
  • 科学的に効果がそもそも期待できないもの
    • 波動アルカリ性食品オカルト疑似科学を理論の中心に据えているもの
    • テレビ番組「発掘!あるある大事典II」で行われたデータの捏造・・・信頼性がそもそも低い実験データを根拠としていたり、そもそも実験すら行っていなかった
    • 科学的な検証が不可能なアンケート結果や、「個人の体験談」を根拠としているもの(バイブル商法
  • 宣伝・勧誘の方法に問題があるもの
    • 不安や恐怖心を煽りながら勧誘を行うもの
    • 宣伝に登場する「専門家」の経歴が、ディプロマミルのように信用に値しないもの
    • クーリングオフに応じない
    • フィットネスクラブで、最初は低料金のコースで入会させ、後から高額のコースへの変更や別料金が必要なオプションの追加を行わせるもの
    • カルト宗教の団体が、美容や痩身を謳った本やサークルを勧誘の手段に用いる(法の華三法行

これらにも減量の効果は一切無い。

精神疾患

最初は美容の目的で手段として体重を減らしたが、次第に「手段の目的化」がおこり、体型を客観的に把握できず単純に体重の数値のみに拘泥する状態になることがある。これが行き過ぎると、自身が理想としている体型への強い渇望感が変質して生じる「神経性無食欲症」(Anorexia, 「拒食症」とも)と呼ばれる精神疾患を患う場合がある。ファッションモデルをやっていたアナ・カロリナ・レストンや、ルイゼル/エリアナ・ラモス姉妹は、体重の増減に憑りつかれた挙句、栄養失調が原因で死亡している。

参考

  1. ^ 広辞苑 第六版「痩身」
  2. ^ a b c 『見てわかる!栄養の図解事典』p.10-18
  3. ^ a b Noorden, Karl (1907). Metabolism and Practical Medicine, the Chapter III 'Obesity'. p. 693 - 695. 
  4. ^ a b NHK「『いままでにないダイエット』 表示やめるよう命令」
  5. ^ 益崎裕章、小塚智沙代、屋比久浩市、「最新医学が明らかにしたメタボリックシンドロームの分子メカニズム」『日本臨床麻酔学会誌』 2012年 32巻 5号 p.665-674, doi:10.2199/jjsca.32.665
  6. ^ a b c d e f g h The Carbohydrate-Insulin Model of Obesity: Beyond ‘Calories In, Calories Out’David S Ludwig, MD, PhD and Cara B Ebbeling, PhD. JAMA Intern Med. Author manuscript; available in PMC 2019 Aug 1. Published in final edited form as: JAMA Intern Med. 2018 Aug 1; 178(8): 1098-1103, doi:10.1001/jamainternmed.2018.2933.
  7. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae af ag ah ai aj ak al am an ao ap aq ar as at au av aw ax ay az ba bb bc bd be bf bg bh bi bj Taubes, Gary (2010). Why We Get Fat. New York City: Alfred A. Knopf. ISBN 978-0-307-27270-6 
  8. ^ Bauer J Obesity: its pathogenesis, etiology and treatment. Arch Intern Med. 1941;67(5):968-994.
  9. ^ CLASSIC KETO”. Charlie Foundation. 2019年10月28日閲覧。
  10. ^ Long-term effects of a ketogenic diet in obese patients Experimental & Clinical Cardiology
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関連項目


 

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