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全国知事会 都道府県県境またぐ旅行は原則中止を

 
内容をざっくり書くと
全国知事会はやむをえず都道府県境をまたいで移動する場合は事前にPCR検査を受けるよう訴えています。
 

緊急事態宣言の対象が8月2日から大阪など6都府県に拡大することを受けて、全国知事会は1日、夏休み中の… →このまま続きを読む

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県境

県境(けんきょう、けんざかい)とは、と県の境界である。

日本においては県のみならず、都道府県相互の境界(都道府県境)全てを指すこともある。但し、大阪府京都府の境界に限って府境と言う場合がある。また世界の一部の国の行政区画で、「県」と日本語訳される、日本の都道府県と類似する地域同士の境界についても「県境」とされる。

都県の極一部が隣県に囲まれていたり、河川の流路変更で対岸に取り残されたりなどの理由で、陸上で接続していない飛び地もある。

県境がある場所

県境は山地尾根海峡といった令制国以来の自然地形で隔てられている場合が多い。中には市街地や集落、田畑の中に県境が引かれていて、標識がなければ都府県境と分からない地域もあり、2つの県に跨る施設も存在する。狭い水路で県境が分けられていたり、瀬戸内海井島大槌島のように小さなが県境で二分されていたりする場合もある。

こうした不思議・不自然に思える県境を紹介した本が出版されたり、後述の埼玉・群馬・栃木三県境のように観光客誘致に活用されたりしている。福井県あわら市石川県加賀市は2015年、吉崎集落にある県境に跨って「越前加賀県境の館」を整備した。能越自動車道で2015年完成した「能越県境パーキングエリア」(石川県富山県)、京都府木津川市奈良県奈良市にまたがる「イオンモール高の原」を含むこうした施設は、床の色分けなどで県境を表示し、記念撮影する来場者に配慮している[1]

三県境

3つの都道府県境が一点に集まる箇所を三県境または三国境(みくにざかい、さんこくきょう)と呼ぶ。三県境は全部で48か所存在する(三重県奈良県間の和歌山県の飛び地含む)。三県境は山の頂上や河川の中央になっていることが多い。山の頂上の場合はそこの山の名前が三国山または三国岳となっていることが多い。

著名な三県境

  • 東武日光線柳生駅の東北東約400mにあり、国内に存在する三国境の中で唯一の平地にあることから一種の観光名所と化している。かつては渡良瀬川の水中に存在すると定義されていた。しかし明治~大正期に渡良瀬遊水地を設置した影響で一帯が沼地へと変わり、その後圃場整備で埋め立てられて水田となった。それぞれの県境は三本ので区分されているが、三県境そのものを示す杭が埋没しており、正確な位置は長らく不明となっていた。2016年1月から、三県境に接する2市1町により県境を策定する測量が実施され、この際、地中に埋もれていた三県境を示すも再発見された。同年3月までに県境確定作業を終了し、地権者立会のもと三県境を示す新たな杭が打たれ、同月31日、加須市役所において栃木市・板倉町・加須市の3首長が境界を定めた文書への調印式を行った[2]。4月1日より発効。
  • 通常、同じ3県が県境を接する点は1箇所のみであるが、和歌山県の北山村全域や新宮市の一部が、三重県と奈良県に挟まれた飛地となっていることもあり、この3県については三県境が5箇所存在するという、全国唯一の地帯となっている[3]。和歌山県では、2013年に「ようこそ さん・けん・きょう 熊野の国へ」[4]と銘打って、案内板の設置・フォトラリーなどの観光キャンペーンを行っていた[3]

三県境の一覧

座標市町村1市町村2市町村3備考
北緯40度14分51.64秒 東経140度57分18.38秒 / 北緯40.2476778度 東経140.9551056度 / 40.2476778; 140.9551056青森県三戸郡田子町岩手県八幡平市秋田県鹿角市四角岳山頂
北緯38度57分29.04秒 東経140度46分25.02秒 / 北緯38.9580667度 東経140.7736167度 / 38.9580667; 140.7736167岩手県一関市宮城県栗原市秋田県雄勝郡東成瀬村栗駒山山頂西側
北緯38度53分21.01秒 東経140度32分49.59秒 / 北緯38.8891694度 東経140.5471083度 / 38.8891694; 140.5471083宮城県大崎市秋田県湯沢市山形県最上郡最上町山頂南側
北緯37度58分35.85秒 東経140度16分48.05秒 / 北緯37.9766250度 東経140.2800139度 / 37.9766250; 140.2800139宮城県刈田郡七ヶ宿町山形県東置賜郡高畠町福島県福島市山頂南側
北緯37度50分49.01秒 東経139度40分51.14秒 / 北緯37.8469472度 東経139.6808722度 / 37.8469472; 139.6808722山形県西置賜郡小国町福島県喜多方市新潟県新発田市御西岳山頂西側
北緯36度55分59.88秒 東経140度15分51.31秒 / 北緯36.9333000度 東経140.2642528度 / 36.9333000; 140.2642528福島県東白川郡棚倉町茨城県久慈郡大子町栃木県大田原市八溝山山頂西側
北緯36度54分38.84秒 東経139度23分35.87秒 / 北緯36.9107889度 東経139.3932972度 / 36.9107889; 139.3932972福島県南会津郡檜枝岐村栃木県日光市群馬県利根郡片品村山頂北側
北緯36度56分25.89秒 東経139度13分54.85秒 / 北緯36.9405250度 東経139.2319028度 / 36.9405250; 139.2319028福島県南会津郡檜枝岐村群馬県利根郡片品村新潟県魚沼市尾瀬ヶ原()
北緯36度11分58.90秒 東経139度41分16.60秒 / 北緯36.1996944度 東経139.6879444度 / 36.1996944; 139.6879444茨城県古河市栃木県栃木市埼玉県加須市渡良瀬川
北緯36度5分26.72秒 東経139度46分34.39秒 / 北緯36.0907556度 東経139.7762194度 / 36.0907556; 139.7762194茨城県猿島郡五霞町埼玉県幸手市千葉県野田市江戸川
北緯36度12分25.36秒 東経139度39分51.97秒 / 北緯36.2070444度 東経139.6644361度 / 36.2070444; 139.6644361栃木県栃木市群馬県邑楽郡板倉町埼玉県加須市栃木・群馬・埼玉の三県境
北緯35度59分7.19秒 東経138度42分45.23秒 / 北緯35.9853306度 東経138.7125639度 / 35.9853306; 138.7125639群馬県多野郡上野村埼玉県秩父市長野県南佐久郡川上村三国山山頂北西側
北緯36度44分18.61秒 東経138度41分45.36秒 / 北緯36.7385028度 東経138.6959333度 / 36.7385028; 138.6959333群馬県吾妻郡中之条町新潟県南魚沼郡湯沢町長野県下水内郡栄村白砂山山頂東側
北緯35度46分57.90秒 東経139度53分37.56秒 / 北緯35.7827500度 東経139.8937667度 / 35.7827500; 139.8937667埼玉県三郷市千葉県松戸市東京都葛飾区江戸川
北緯35度51分17.28秒 東経138度56分38.15秒 / 北緯35.8548000度 東経138.9439306度 / 35.8548000; 138.9439306埼玉県秩父市東京都西多摩郡奥多摩町山梨県北都留郡丹波山村雲取山山頂南側
北緯35度54分33.24秒 東経138度43分44.36秒 / 北緯35.9092333度 東経138.7289889度 / 35.9092333; 138.7289889埼玉県秩父市山梨県山梨市長野県南佐久郡川上村甲武信ヶ岳山頂
北緯35度40分19.13秒 東経139度7分52.87秒 / 北緯35.6719806度 東経139.1313528度 / 35.6719806; 139.1313528東京都西多摩郡檜原村神奈川県相模原市緑区山梨県上野原市三国峠
北緯35度24分2.22秒 東経138度54分59.04秒 / 北緯35.4006167度 東経138.9164000度 / 35.4006167; 138.9164000神奈川県足柄上郡山北町山梨県南都留郡山中湖村静岡県駿東郡小山町三国山山頂
北緯36度45分58.19秒 東経137度45分44.78秒 / 北緯36.7661639度 東経137.7624389度 / 36.7661639; 137.7624389新潟県糸魚川市富山県下新川郡朝日町長野県北安曇郡白馬村山頂
北緯36度17分57.13秒 東経136度47分32.30秒 / 北緯36.2992028度 東経136.7923056度 / 36.2992028; 136.7923056富山県南砺市石川県白山市岐阜県大野郡白川村笈ヶ岳山頂北側
北緯36度23分23.26秒 東経137度35分14.36秒 / 北緯36.3897944度 東経137.5873222度 / 36.3897944; 137.5873222富山県富山市長野県大町市岐阜県高山市三俣蓮華岳山頂西側
北緯36度5分10.61秒 東経136度45分15.42秒 / 北緯36.0862806度 東経136.7542833度 / 36.0862806; 136.7542833石川県白山市福井県大野市岐阜県高山市三ノ峰山頂南側
北緯35度39分31.15秒 東経136度16分50.60秒 / 北緯35.6586528度 東経136.2807222度 / 35.6586528; 136.2807222福井県南条郡南越前町岐阜県揖斐郡揖斐川町滋賀県長浜市山頂西側
北緯35度21分21.64秒 東経135度46分7.16秒 / 北緯35.3560111度 東経135.7686556度 / 35.3560111; 135.7686556福井県大飯郡おおい町滋賀県高島市京都府南丹市山頂北側
北緯35度38分40.37秒 東経138度13分7.22秒 / 北緯35.6445472度 東経138.2186722度 / 35.6445472; 138.2186722山梨県南アルプス市長野県伊那市静岡県静岡市葵区三峰岳山頂北側
北緯35度17分21.60秒 東経137度33分43.21秒 / 北緯35.2893333度 東経137.5620028度 / 35.2893333; 137.5620028長野県下伊那郡根羽村岐阜県恵那市愛知県豊田市三国山山頂東側
北緯35度12分44.89秒 東経137度50分17.20秒 / 北緯35.2124694度 東経137.8381111度 / 35.2124694; 137.8381111長野県下伊那郡天龍村静岡県浜松市天竜区愛知県北設楽郡豊根村天竜川佐久間湖
北緯35度8分5.17秒 東経136度40分21.99秒 / 北緯35.1347694度 東経136.6727750度 / 35.1347694; 136.6727750岐阜県海津市愛知県愛西市三重県桑名市長良川
北緯35度13分3.86秒 東経136度24分54.44秒 / 北緯35.2177389度 東経136.4151222度 / 35.2177389; 136.4151222岐阜県大垣市三重県いなべ市滋賀県犬上郡多賀町山頂北西側
北緯34度47分29.56秒 東経136度1分20.23秒 / 北緯34.7915444度 東経136.0222861度 / 34.7915444; 136.0222861三重県伊賀市滋賀県甲賀市京都府相楽郡南山城村
北緯34度44分18.81秒 東経136度3分19.66秒 / 北緯34.7385583度 東経136.0554611度 / 34.7385583; 136.0554611三重県伊賀市京都府相楽郡南山城村奈良県奈良市
北緯34度0分35.60秒 東経136度0分13.03秒 / 北緯34.0098889度 東経136.0036194度 / 34.0098889; 136.0036194三重県熊野市奈良県吉野郡下北山村和歌山県東牟婁郡北山村北山川七色貯水池
北緯33度55分6.48秒 東経135度54分32.75秒 / 北緯33.9184667度 東経135.9090972度 / 33.9184667; 135.9090972三重県熊野市奈良県吉野郡十津川村和歌山県東牟婁郡北山村北山川()
北緯33度54分33.69秒 東経135度52分50.78秒 / 北緯33.9093583度 東経135.8807722度 / 33.9093583; 135.8807722三重県熊野市奈良県吉野郡十津川村和歌山県新宮市北山川瀞峡
北緯33度51分41.73秒 東経135度52分29.39秒 / 北緯33.8615917度 東経135.8748306度 / 33.8615917; 135.8748306三重県熊野市奈良県吉野郡十津川村和歌山県新宮市北山川
北緯33度52分23.36秒 東経135度51分28.51秒 / 北緯33.8731556度 東経135.8579194度 / 33.8731556; 135.8579194三重県熊野市奈良県吉野郡十津川村和歌山県新宮市北山川
北緯35度2分43.03秒 東経135度22分16.50秒 / 北緯35.0452861度 東経135.3712500度 / 35.0452861; 135.3712500京都府南丹市大阪府豊能郡能勢町兵庫県丹波篠山市山頂
北緯34度46分40.74秒 東経135度43分43.10秒 / 北緯34.7779833度 東経135.7286389度 / 34.7779833; 135.7286389京都府京田辺市大阪府枚方市奈良県生駒市
北緯34度22分59.57秒 東経135度39分4.16秒 / 北緯34.3832139度 東経135.6511556度 / 34.3832139; 135.6511556大阪府河内長野市奈良県五條市和歌山県橋本市神福山山頂南西側)
北緯35度14分27.65秒 東経134度24分10.16秒 / 北緯35.2410139度 東経134.4028222度 / 35.2410139; 134.4028222兵庫県宍粟市鳥取県八頭郡若桜町岡山県英田郡西粟倉村北西側
北緯35度4分27.30秒 東経133度8分11.12秒 / 北緯35.0742500度 東経133.1364222度 / 35.0742500; 133.1364222鳥取県日野郡日南町島根県仁多郡奥出雲町広島県庄原市山頂北側
北緯35度3分27.67秒 東経133度16分8.86秒 / 北緯35.0576861度 東経133.2691278度 / 35.0576861; 133.2691278鳥取県日野郡日南町岡山県新見市広島県庄原市山頂
北緯34度28分3.56秒 東経132度4分6.97秒 / 北緯34.4676556度 東経132.0686028度 / 34.4676556; 132.0686028島根県益田市広島県廿日市市山口県岩国市冠山山頂西側
北緯34度0分45.04秒 東経133度40分46.37秒 / 北緯34.0125111度 東経133.6795472度 / 34.0125111; 133.6795472徳島県三好市香川県観音寺市愛媛県四国中央市曼陀峠西側
北緯33度52分54.49秒 東経133度39分38.17秒 / 北緯33.8818028度 東経133.6606028度 / 33.8818028; 133.6606028徳島県三好市愛媛県四国中央市高知県長岡郡大豊町三傍示山山頂南側
北緯33度6分14.64秒 東経130度50分23.27秒 / 北緯33.1040667度 東経130.8397972度 / 33.1040667; 130.8397972福岡県八女市熊本県山鹿市大分県日田市山頂
北緯32度49分58.85秒 東経131度19分46.29秒 / 北緯32.8330139度 東経131.3295250度 / 32.8330139; 131.3295250熊本県阿蘇郡高森町大分県竹田市宮崎県西臼杵郡高千穂町国観峠西側
北緯32度6分2.86秒 東経130度43分14.20秒 / 北緯32.1007944度 東経130.7206111度 / 32.1007944; 130.7206111熊本県人吉市宮崎県えびの市鹿児島県伊佐市

境界未定地域

2018年10月1日現在、各都道府県間における境界が定まっていない地域は14箇所である(隣接している地域もあるので、数え方が異なる場合がある。ここでは国土地理院の表記に従う)。総面積は、12780.25平方キロメートルである。このの数値の単位は、特記がない限り、全て平方キロメートルで示す。各地名の後の()内の数値は、平成30年(国土地理院発行)に記載されている、その境界未定地域のうち各自治体の参考値である[5]

解消された境界未定地域

  • 青森県十和田市 (688.60) と秋田県鹿角郡小坂町 (178.00) の866.60と、十和田湖の湖面の61.02
    • 県の境界にわたる市町の境界の確定(平成20年総務省告示第721号)」が2008年12月25日公示され、境界が画定した(カッコ内は、平成19年度版全国市町村要覧に記載されている便宜上の概算数値)。
    • 十和田湖は陸奥国北郡(東岸)と鹿角郡(西岸)に跨っているが、境界は不明確だった。江戸時代には両郡とも盛岡藩領(北郡の一部は七戸藩領)であったため大きな問題にならなかったが、戊辰戦争の結果この付近の領地は盛岡藩から没収され、九戸県、八戸県、三戸県を経て、明治2年11月28日(1869年12月30日)に北郡(七戸藩領を除く)が斗南藩に、鹿角郡が江刺県に属することになった。最終的に境界未定のまま、前者が青森県、後者が秋田県になった。後に南岸は、中山半島の西にあるが境界と暫定的に定められた。しかし北岸に関しては両県の主張が異なり、長年対立していた。面積により金額が決まる地方交付税交付金が、境界が確定することにより増額するため、財政難にある関係自治体が早期解決をめざし調整がされてきた。なお、増額された地方交付税交付金は、少なくとも10年間は十和田湖の環境対策や景観保護対策に使われる予定である[10]
  • 熊本県球磨郡水上村 (192.11) と宮崎県東臼杵郡椎葉村 (536.20) の728.31
    • 2010年9月30日の官報で「県の境界にわたる市町の境界の確定(平成22年総務省告示第356号)」が公示され、境界が画定した(カッコ内は、平成19年度版全国市町村要覧に記載されている便宜上の概算数値)。
    • 廃藩置県以来、現在の国道388号付近の約1700メートルが未確定だったが、水上村の呼びかけに椎葉村が応じ、合意に至った。確定によって椎葉村の面積が1.15平方キロメートル増加した[11][12]

脚注

[脚注の使い方]
  1. ^ 【生活調べたい】県境めぐり 新たな観光に/自治体PR 生活文化の境界も『読売新聞』朝刊2016年3月22日くらし面
  2. ^ 埼玉、栃木、群馬の3県境が確定で調印式2016年3月31日 NHK
  3. ^ a b 県境マニアへ観光振興 唯一の特殊地理売り込み 和歌山県など 産経WEST、2013年1月8日(2016年4月6日閲覧)。
  4. ^ ようこそ!「さん・けん・きょう」へ 和歌山県東牟婁振興局、2013年3月6日(2016年4月6日閲覧)。
  5. ^ 平成30年全国都道府県市区町村別面積調 都道府県別面積(国土地理院サイト内)
  6. ^ @nifty:デイリーポータルZ:番外地・境界未定地・飛び地2006
  7. ^ 「Internet Archive」の「今週の東都よみうり」
  8. ^ [1]
  9. ^ その他資料(富士山高所科学研究会サイト内)
  10. ^ 十和田湖周辺の青森県・秋田県境界が画定しました”. 国土地理院. 2013年3月2日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2015年12月11日閲覧。
  11. ^ 熊本・宮崎の一部、やっと県境決まる 廃藩置県後未画定朝日新聞、2010年10月2日閲覧
  12. ^ 宮崎・熊本の県境確定 廃藩置県以来の課題解決共同通信、2010年10月2日閲覧

関連項目

外部リンク

ポリメラーゼ連鎖反応

ポリメラーゼ連鎖反応(ポリメラーゼれんさはんのう、英語: polymerase chain reaction)とは、DNAサンプルの特定領域を数百万〜数十億倍に増幅させる反応または技術。英語表記の頭文字を取ってPCR法、あるいは単純にPCRと呼ばれ、「ポリメラーゼ・チェーン・リアクション」と英語読みされる場合もある。

DNAポリメラーゼと呼ばれる酵素の働きを利用して、一連の温度変化のサイクルを経て任意の遺伝子領域やゲノム領域のコピーを指数関数的(ねずみ算的、連鎖的)に増幅することで、少量のDNAサンプルからその詳細を研究するに十分な量にまで増幅することが目的である[1][2][3]医療分子生物学法医学などの分野で広く使用されている有用な技術であり、1983年にキャリー・マリス(Kary Mullis)によって発明され[4][5]ノーベル賞を受賞した。

PCR法が確立したことにより、DNA配列や配列決定、遺伝子変異誘導といった実験が可能になり、分子遺伝学生理学分類学などの研究分野で活用されている他、古代DNAサンプルの解析、法医学親子鑑定などで利用されるDNA型鑑定、感染性病原体の特定や感染症診断に関わる技術開発(核酸増幅検査)、などが飛躍的に進んだ。また、PCR法から逆転写ポリメラーゼ連鎖反応リアルタイムPCRDNAシークエンシング等の技術が派生して開発されている。そのため今日では、PCR法は生物学医学をはじめとする幅広い分野における遺伝子解析の基礎となっている[6][7]

原理

PCR法は、試薬を混交したDNA溶液の温度を上げて下げる、という一連の熱サイクルによって動作する。このDNAサンプルの加熱と冷却の繰り返しサイクルの中で、二本鎖DNAの乖離、プライマーの結合、酵素反応によるDNA合成、という3つの反応が進み、最終的に特定領域のDNA断片が大量に複製される。

PCR法では、増幅対象(テンプレート)のDNAサンプルの他に、大量のプライマー(標的DNA領域に相補的な配列を持つ短い一本鎖DNA(オリゴヌクレオチド))とDNAの構成要素である遊離ヌクレオチド、そしてポリメラーゼの一種であるDNA合成酵素DNAポリメラーゼ)という3つの試薬を使用する。

  1. 最初のステップでは、DNA二重らせんの2本鎖DNAを高温下で変性させ、1本鎖DNAに物理的に分離する。変性が起こる温度は、DNAの塩基構成および長さ(塩基数)によって異なり、一般に長いDNAほど温度を高くする必要がある。
  2. 次に、この1本鎖DNAを含む溶液を冷却して、プライマーを一本鎖DNAの相補配列部位に結合させることで、部分的に2本鎖を作らせる(アニーリング)。冷却が急速であると、長いDNA同士では再結合して2本鎖になることは難しいが、短いDNA断片(オリゴヌクレオチド)は容易に結合できることを利用している。この結果、対象とする長い1本鎖DNAの一部にプライマーが結合したものができる。プライマーをDNAよりも圧倒的に多い状況にしておくことで、DNAとプライマーが結合する傾向はDNAとDNAが結合する傾向よりも、さらに優越的になる。
  3. 次に、溶液を若干加熱して、この2本鎖DNA部位をテンプレートとしてDNAポリメラーゼを働かせることで、プライマーが結合した部分を起点として、遊離ヌクレオチドを利用して1本鎖部分と相補的なDNAが酵素的に合成される。DNAが合成された後、再び高温にして最初のステップに戻り、このサイクルを最初のDNA変性から繰り返すことにより増幅をすすめる。PCR反応が進むことで、生成されたDNA自体が複製のテンプレートとして使用され、元のDNAテンプレートが指数関数的に増幅される連鎖反応が進む。

以上のようにPCR法は、DNA鎖長による変性とアニーリングの進行速度の違いを利用して、反応溶液の温度の上下を繰り返すだけでDNA合成を繰り返し、任意のDNAの部分領域を増幅する技術である。

使用するDNAポリメラーゼが熱に弱い場合、変性ステップの高温下でDNAとともにポリメラーゼも変性してしまい、失活してしまう。そのためPCR法の開発当初は、DNA変性時の毎回にDNAポリメラーゼを酵素として追加しており、手間と費用がかかっていた[8]。現在では、サーマスアクアティカスという好熱菌由来の熱安定性DNAポリメラーゼであるTaqポリメラーゼなどを用いることで、途中で酵素の追加をせずに反応を連続して進めることができる。

手順

準備

増幅対象のDNA領域の両端の塩基配列を決定し、対応するプライマーを人為合成する。このときプライマーは、増幅予定の2本鎖DNAの両鎖それぞれの3'側に結合する相補配列であり、通常20塩基程度である。多くの場合、実験室でカスタムメイドされるか、商業的な生化学サプライヤーから購入可能である。

反応液調製

増幅対象DNA、プライマー、DNAポリメラーゼおよびDNA合成の素材(基質)であるデオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP)、そして酵素が働く至適塩濃度環境をつくるためのバッファー溶液を混合し、PCR装置(サーマルサイクラー)にセットする。流通しているPCR試薬キットに付属するバッファー溶液には二価カチオンが含まれていることが多い[9]通常はマグネシウムイオン (Mg2+)であるが、PCR媒介DNA突然変異誘発が高いマンガンイオン(Mn2+)を使用することで、あえてDNA合成の間のエラー率を増加させることも可能である[10]。Taq DNAポリメラーゼの場合、一価カチオンとしてカリウムイオン(K+)が入れられることもある[11]。また場合によっては硫酸アンモニウムを加えることもある。アンモニウムイオン(NH4+)は特にミスマッチなプライマーとテンプレート塩基対間の弱い水素結合を不安定化する効果があり、特異性を高めることができる[11]

PCRサイクル

  1. 反応液を94°C程度に加熱し、30秒から1分間温度を保ち、2本鎖DNAを1本鎖に分かれさせる(図①)。
  2. 60°C程度(プライマーによって若干異なる)にまで急速冷却し、その1本鎖DNAとプライマーをアニーリングさせる(図②)。
  3. プライマーの分離がおきずDNAポリメラーゼの活性に至適な温度帯まで、再び加熱する。実験目的により、その温度は60–72°C程度に設定される。DNAが合成されるのに必要な時間、増幅する長さによるが通常1〜2分、この温度を保つ(図③)。
  4. ここまでが1つのサイクルで、以後、①から③までの手順を繰り返していく事で特定のDNA断片を増幅させる。

PCR処理をn回のサイクルを行うと、1つの2本鎖DNAから目的部分を2n-2n倍に増幅する。ただし、通常は最高で35サイクル程度行なう事から、近似的には2nの項は無視できる大きさになる。サイクル数をさらに増やすと、時間経過によりDNAポリメラーゼが活性を失い、またdNTPやプライマーなどの試薬が消費し尽くされるため、反応が制限されて最終的には一連の反応は停止する。

留意点

この反応の成否は、増幅対象DNAとプライマーの塩基配列、サイクル中の各設定温度・時間などに依存する。それらが不適切な場合、無関係なDNA配列を増幅したり、増幅が見られないことがある。また、合成過程において変異が起こる可能性も少なからずあるため、使用目的によっては生成物の塩基配列のチェックが必要である。

PCRの応用

DNAの増幅と定量

PCRはターゲットのDNAの領域を劇的に増幅する技術であり、非常に少量のDNAサンプルであっても、PCRを経ることで分析を可能になる場合がある。このことは、証拠として極微量のDNAしか入手できない法医学などの分野においては、特に重要である。あるいは、例えば数万年前の古代のDNAの分析などにもPCRは威力を発揮する[12]

定量PCR(リアルタイムPCR、あるいは単純にqPCRとも呼ばれる。RT-PCRとは異なることに注意)の技術確立により、サンプル中に存在する特定のDNA配列の量も推定することができる[13]。これは、遺伝子発現レベルを定量的に決定する用途などで利用されている。定量的PCRでは、PCRサイクルのプロセスを実行中に、PCRサイクルの中で増幅されてゆくPCR産物の濃度をリアルタイムで測定していくことで、元々存在したターゲットのDNA領域の存在量を定量化することができる。大きく2つの手法があり、一つは二本鎖の間に非特異的に保持される蛍光色素を使用する方法、もう一つは予め蛍光標識が付加され特定の配列をコードしたプローブを利用した方法である。後者の方法では、プローブとその相補DNAのハイブリダイゼーションが行われることで初めて蛍光を検出することができる。

リアルタイムPCRと逆転写反応を組み合わせたRT-qPCR(逆転写ポリメラーゼ連鎖反応)と呼ばれる手法では、DNAではなくRNAの定量を可能にしている。この技術では、まず最初にmRNAをcDNAに変換し、そのcDNAをqPCRによって定量化する。この手法は、がんなどの遺伝病に関連する遺伝子の検出や発現量測定に多く利用されている[14]

生物学研究への応用

PCRは分子生物学遺伝学をはじめとする、様々な研究分野に応用されている。

  • PCRを用いてゲノム中の特定のDNA領域を選択的に増幅し分離することができる。このようなPCRの利用は、サザンブロッティングノーザンブロッティングといったハイブリダイゼーション用プローブの生成や、特定のDNA領域に由来した大量のDNA断片を必要とするDNAクローニングなどで広く行われている。
  • PCRはDNAシーケンスを行う上でもしばしば重要である。様々なPCRにより、例えば完全に未知のゲノムから解析対象の遺伝子配列やDNA領域を抽出して増幅したりできる。
  • PCRは、DNAクローニングなどの古典的な実験プロセスで多く活用されている。例えば大きなゲノムから、特定のゲノム領域をベクターに挿入する際などに利用される。また、すでにベクターに挿入されているDNA断片を分析したり増幅するために利用することもできる。PCRプロトコルを一部変更することで、挿入断片の突然変異を人為的に誘発することもできる。
  • 古代DNAを対象とした研究にも、PCRはよく活用される。このような古代DNAは大部分が紫外線や加水分解により分解されており、極微量の二本鎖DNAしか存在しない場合が多いため、PCRで増幅をかけることではじめて解析を行うことが可能になる。実際にPCRを用いた研究例としては、ネアンデルタール人の骨、4万年前のマンモスの凍結組織、エジプトミイラの脳などがあり、他にはロシア皇帝やイギリス王リチャード3世の同定などが行われている[12]。場合によっては、かなりの程度分解されてしまったDNAサンプルであっても、PCR増幅をかけることである程度元のDNA配列を復元することができる可能性がある。
  • 遺伝子発現のパターンの研究にもPCRが利用される。体組織や個々の細胞をさまざまな時系列段階で分析して、どの遺伝子が活性化/非活性化したのかを調べることができるほか、定量PCRを使用して実際の発現レベルを詳細に定量化することもできる。
  • PCRは遺伝的連鎖の研究にも利用されている。例えば、個々の精子からいくつかの遺伝子座を同時に増幅し、減数分裂後の染色体クロスオーバーを調べた研究が報告されている[15]。この研究では、数千の精子を分析することで、非常に近い遺伝子座間のまれなクロスオーバーイベントが直接観察されている。同様に、異常な欠失、挿入、転座、または反転を分析することができる。
  • PCRを使用して、任意の遺伝子やゲノム領域の部位特異的な突然変異を誘発することができる。これらの変異体を調べることで、例えばタンパク質の機能を解明したり、あるいはタンパク質の機能を変更または改善する研究を進めることができる。

出生前診断

PCRは、子供が生まれる前に特定の遺伝の保因者であるかどうか、あるいは実際に病気に冒されているかどうかをテストする、いわゆる出生前診断に利用することができる[16]出生前検査用のDNAサンプルは、羊水穿刺による絨毛膜絨毛サンプリング、あるいは母親の血流中を循環するごく少量の胎児細胞の分析によって取得できる。PCR分析は着床前診断も不可欠であり、発生中の胚の個々の細胞の突然変異をテストできる。

臓器移植の組織タイピング

PCRは、臓器移植に不可欠な組織タイピングの高感度な試験としても使用できる。血液型に対する従来の抗体ベースのテストをPCRベースのテストに置き換える提案も、2008年にされている[17]

がんの遺伝子分析

がんの多くの形態は、がん発生に関連する各種遺伝子(がん遺伝子)の配列変化を伴うが、PCR技術を活用してこの突然変異を分析することで、治療方針を患者に合わせて個別にカスタマイズできる可能性がある。またPCRは、白血病リンパ腫などの悪性疾患の早期診断を可能にする。がん研究分野で開発が進められており、現在ではすでにPCRは日常的に使用されている。ゲノムDNAサンプルを直接PCRでアッセイすることで、転座特異的悪性細胞を他の方法よりも少なくとも10,000倍高い感度で検出できることが報告されている[18]。PCRはまた、腫瘍抑制因子の分離と増幅も可能にする。たとえば、定量PCRを使用して単一細胞を定量し、DNAやmRNA、タンパク質の存在量と組み合わせを解析することが可能である[19]

感染症の診断

PCRは、細菌やウイルスによって引き起こされる感染症の、高感度で迅速な診断に役立っている[20]。PCRでは、マイコバクテリア嫌気性細菌、または組織培養アッセイや動物モデルからのウイルスなど、培養できない微生物や成長の遅い微生物の迅速な同定も可能である。またPCR診断は、感染性病原体の検出のみならず、その細菌が特定の遺伝子を持っているかどうかを判断することで、非病原性株か病原性株かを区別できる[20][21]。一方で、様々な欠点も報告されている(後述)。

  • ヒト免疫不全ウイルスHIV)は、発見して根絶するのが難しい標的である。初期の感染診断は、血流中を循環するウイルス抗体の存在に依存していたが、抗体は感染後何週間も経ってからでないと現れず、母体の抗体は新生児の感染を隠してしまい、またHIV治療薬による治療では抗体量が変化しないという問題があった。そこで、50,000以上の細胞DNAサンプル中からわずか1つのウイルスゲノムを検出できる高感度PCRの手法が開発された[22]。この方法により、感染症の早期検出や献血された血液のウイルス検査、新生児の迅速な感染検査か可能になり、また抗ウイルス治療の効果を定量化できるようになった。
  • 結核ようないくつかの病気を引き起こす微生物は、患者からのサンプリングが難しく、また実験室で成長するのが遅いことが知られており、培養ベースの診断では多くの手間暇がかかっていた。PCRによるテストにより、サンプル中から疾患原因微生物を検出できるほか、遺伝子分析から抗生物質耐性の有無等も検出でき、効果的な治療方針の設定や治療効果の評価に繋がる可能性がある。
  • 家畜または野生動物の集団を介した疾患生物の拡散や新しい毒性を持つサブタイプの出現は、PCRテストによって監視できる。
  • ウイルスのDNAの標的配列に特異的なプライマーを使用することで、ウイルスDNAをPCRで検出することができるほか、DNAシーケンスにも使用できる。PCRの感度が高いため、感染直後および病気の発症前であってもウイルス検出が可能な場合がある[23]。早期発見により、医師に治療の重要なリードタイムを与える可能性がある。患者の内部に含まれるウイルス量は、PCRベースのDNA定量技術によっても定量化できる。
  • 百日咳は百日咳菌と呼ばれる細菌によって引き起こされる。この細菌は、さまざまな動物や人間に影響を与える深刻な急性呼吸器感染症を特徴としており、多くの幼い子供の死をもたらしている。百日咳毒素は、2つの二量体によって細胞受容体に結合し、細胞免疫に役割を果たすTリンパ球などと反応する、タンパク質毒素である[24]。PCRにより百日咳毒素遺伝子内にある配列を検出できるため、培養法と比較して非常に効率的に百日咳の診断が可能である[25]

法医学への応用

PCRベースのDNA型鑑定(フィンガープリンティング)は、法医学分野で広く応用されている。

  • DNA型鑑定は、世界中の全人口から一人を一意に区別することができる技術である。この技術を応用し、微量のDNAサンプルを犯罪現場から採取して分析し、囚人のから比較することで、容疑者を特定できる場合がある。より簡易な利用方法としては、犯罪捜査中に容疑者を迅速に除外するために利用される。あるいはまた、数十年前もの前の犯罪証拠品をテストすることで、有罪判決を受けた人々の犯行を確認したり、あるいは免罪することにも繋がる。
  • 法医学におけるDNAタイピング(フォレンジックDNAタイピング)は、犯罪現場で発見された証拠の分析から犯罪容疑者を特定または除外する効果的な方法である。ヒトゲノムには、遺伝子配列内またはゲノムの非コード領域に見られる多くの反復領域がある。具体的には、ヒトDNAの最大40%が反復的であることが知られている[26]。ゲノム内のこれらの反復非コード領域には2種類あり、一つは可変長タンデムリピート(VNTR)と呼ばれ、10〜100塩基対の長さである一方で、他方はショートタンデムリピート(STR)と呼ばれ、2〜10塩基対の繰り返しセクションで構成されます。そして、各反復領域に隣接するプライマーを使用してPCR増幅をかけることができる。各個人から取得したいくつかのSTRのフラグメントのサイズの分布を調べると、統計的に高い確率で、各個人を一意に特定することができる[26]。さらに、ヒトゲノムの完全配列はすでに決定されており、この配列情報はNCBI Webサイトから簡単にアクセスできるため、様々な応用がなされている。たとえばFBIでは識別に使用するDNAマーカーサイトのセットを編集しており、これらは結合DNAインデックスシステム(CODIS)DNAデータベースと呼ばれている[26]。このデータベースを使用すると、DNAサンプルが一致する確率を統計的に決定できる。分析に使用するターゲットDNAの量が非常に少なくて済むため、PCRはフォレンジックDNAタイピングに使用する非常に強力で重要な分析ツールである。たとえば、毛包が付着した人間の髪には、1本もあれば分析を行うのに十分なDNAが含まれている。同様に、数個の精子、指の爪の下からの皮膚サンプル、または少量の血液は、決定的な分析に十分なDNAを提供できる[26]
  • 一方で逆に、識別力の低い形式によるDNAフィンガープリンティングは、親子鑑定に活用されている。この場合、身元不明の人間の遺体といった対象者は予想される近親者、すなわち親や兄弟、子供等のDNAと比較される。養子になった(誘拐された)子供の生物学的な両親を確認するためや、新生児の実際の生物学的父親の確認 (または除外)などにも利用される。
  • アメロゲニン遺伝子を対象としたPCRでは、法医学的な骨サンプルからリアルタイムで男女の性決定をする事ができる。これにより、古代標本や犯罪容疑者の性別を判別することができる[27]

PCRの技術的制約

PCRには原理と実際の作業は非常に簡単で、結果を迅速に得ることができ、また非常に感度が高い、といった多くの利点がある。定量PCR(qPCR、quantitative PCR)ではさらに、ターゲットとなったDNA領域の定量化もできる利点がある。一方で、PCRには様々な技術的制約や限界も知られている。

PCRの技術的な制限の1つに、選択的増幅を可能にするプライマーを生成するために、ターゲット領域の配列に関する事前情報が必要なことが挙げられる[28]。すなわち、PCR実施者は通常、プライマーとテンプレートが適切に結合するように、事前にターゲットとなるDNA領域の前後の配列情報を知っておく必要がある。そのため、配列情報が完全に未知のターゲットに対しては、PCRをかけることは原則的に不可能である。また、他のあらゆる酵素と同様であるが、DNAポリメラーゼ自体もDNA合成時にエラーを起こしやすく、生成されるPCR増幅物の配列に変異が生じることがある[29]。さらに、PCRはごく少量のDNAでも増幅できるため、誤って混入したDNAを元に増幅が起きてしまい、曖昧な結果や誤った結果が生じることがある。

このような問題を回避し、PCR条件を最適化するため、多くの手法と手順が開発されている[30][31]。例えば、サンプルが外来DNAの混入によって汚染されてしまう可能性を最小限に抑えるために、試薬の準備とPCR処理・分析、の各ステップで別々の部屋を利用することで、両者を空間的に分離することが有効である[32]。また、サンプルや試薬の操作には常に使い捨ての新品チューブ類やフィルター付きピペットチップを使用し、作業台や機器は徹底的に洗浄して常にきれいな空間で作業することが有効である[33]。PCR産物の収量を改善して偽産物の形成を回避する上でプライマー設計を見直すこと、バッファーやポリメラーゼ酵素の種類を検討することも、また重要である。バッファーシステムにホルムアミドなどの試薬を添加すると、PCRの特異性と収量が増加する場合がある[34]。プライマー設計を支援するための、理論的なPCR結果のコンピューターシミュレーション(Electronic PCR)も開発されている[35]

感染症診断におけるPCRの特徴

PCRは非常に強力で実用的な研究ツールであり、実際に多くの感染症において、病因の配列決定はPCRを用いて解明されている。この手法は、既知ウイルスや未知ウイルスの識別に役立ち、疾患自体の理解に大きく貢献している。手順をさらに簡素化でき、高感度の検出システムを開発できれば、PCRは今後臨床検査室の重要な位置を占めるようになると考えられている[36]。しかしながら、感染症診断におけるPCRの利用には、利点のみならず様々な欠点も指摘されている。

利点

  • ヒトゲノム(30億塩基対)のような長大なDNA分子を含む検体中から、特定のDNA断片(数百から数千塩基対)だけを選択的に増幅させることができる[1]
  • 極めて微量なDNA量で目的を達成できる。
  • 短時間で増幅反応を完了できる[2]。増幅に要する時間が2時間以下程度と短い。
  • 使用機器(PCR機)等は共通のまま、病原体ごとに特異的なプライマーを用いることで検査が可能である[2]
  • 病原体は死滅していても(感染力を失っていても)標的核酸が保存されていれば増幅でき、危険な病原体でも不活化してから検査することができる[2]
  • Nested PCR、リアルタイムPCRなどを利用することで感度を上げることができる[2]

欠点

  • 臓器や組織など生体材料を検体とする場合、採材部位や材料の前処理によって検出率が異なり、結果が陰性であっても生体における病原体の存在は必ずしも否定できない[2]
  • 核酸の増幅には反応阻害物の生成などによる反応効率の低下などの影響があるため限界があり、核酸が検出可能な量にまで増幅できなければ結果は陰性となるが、そのような場合には病原体の存在を否定できない[2]
  • 血液・糞便など生体材料の検査では検査材料中の阻害物質の影響を受けることがあるため精製作業が必要とされるが、それでも完全ではないとされている[2]。また、検査材料の保存状態や凍結融解の回数、核酸精製の方法・条件などが検査効率や検査結果に大きな影響を与えることがある[2]
  • 検査時の陽性対照からの汚染、以前の検査や実験に由来する汚染、試薬類への核酸の混入が誤った陽性を招く危険性がある(コンタミネーション)[2]

歴史と背景

Kjell Kleppeとハー・ゴビンド・コラナらは、プライマーと短いDNAテンプレートを使用して酵素アッセイをin vitroで行う手法を、1971年にJournal of Molecular Biology(分子生物学ジャーナル)に最初に発表した[37]。これはPCRの基本的な原理を説明したものであったが、当時あまり注目されておらず、ポリメラーゼ連鎖反応の発明は一般的に1983年のキャリー・マリスの功績によるものとみなされている[38]

1983年にマリスがPCRを開発したとき、彼はカリフォルニア州エメリービルで、最初のバイオテクノロジー企業の1つである社(Cetus Corporation)で働いていた。マリスは「ある夜、Pacific Coast Highwayを車でドライブ中に、PCRのアイデアを思いついた」と書いている[39]。彼は、DNAの変化(突然変異)を分析する新しい方法を考えていた時、当時すでに知られていたオリゴヌクレオチドとDNAポリメラーゼを用いたDNA合成反応を繰り返すことで核酸の部分領域を増幅することを思いついた[39]

マリスはこの方法を "polymerase-catalyzed chain reaction"(ポリメラーゼ触媒連鎖反応)と名付け、ネイチャーサイエンスなどの著名な科学雑誌に論文として投稿したが、掲載されなかった。一方、PCR法自体はシータス社の同僚の手により鎌状赤血球症という遺伝性疾患の迅速な診断手段に応用された。サイエンス誌に "Enzymatic amplification of beta-globin genomic sequences and restriction site analysis for diagnosis of sickle cell anemia"として報告され、オリジナル論文より前に世界の科学者の注目を集めることとなった[5]。1987年にようやく、マリスの論文は Methods in Enzymology 誌に"Specific synthesis of DNA in vitro via a polymerase-catalyzed chain reaction."として掲載された[40]。後にマリスはサイエンティフィック・アメリカンで、「PCRは、遺伝物質DNAの単一分子から始めて、午後には1,000億の類似した分子を生成できる。反応は簡単に実行できる。試験管、いくつかの簡単な試薬、および熱源を必要とするだけである」と記述している[41]。DNAフィンガープリンティングは1988年に父子鑑定に初めて使用された[42]

この成果を評価され、マリスはシータス社の同僚と共に、PCR技術を立証してから7年後の1993年にノーベル化学賞を受賞した[43]。また、1985年のR.K. SaikiおよびH.A. Erlichによる“Enzymatic Amplification of β-globin Genomic Sequences and Restriction Site Analysis for Diagnosis of Sickle Cell Anemia”(「鎌状赤血球貧血の診断のためのβグロビンゲノムシーケンスの酵素的増幅および制限部位分析」)の論文が、2017年の米国化学会の化学史部門の化学ブレイクスルー賞を受賞した[44][45]。しかしながら、マリスの研究に対する他の科学者の貢献や、彼がPCR原理の唯一の発明者であったかどうかに関しては、以下に記述するように、いくつかの論争が残っている。

PCRは当初、大腸菌のDNAポリメラーゼIをズブチリシン処理し、5'-3'エキソヌクレアーゼ活性を除去したクレノー断片を用いて反応を起こすものが大半であった。しかしながらこの酵素は、各複製サイクル後のDNA二重らせんの分離に必要な高温に耐えられず、DNAポリメラーゼが失活してしまうために、サーマルサイクルごとに手作業でこの酵素を加える必要があった[46]。そのため、DNA複製の初期手順は非常に非効率的で時間がかかり、プロセス全体で大量のDNAポリメラーゼと継続的な処理が必要であった。シータス社の研究グループは、この欠点を解決するために、50〜80°Cもの高温環境(温泉)に住んでいる好熱性細菌であるサーマス・アクアティクス(T. aquaticus)[47]から、耐熱性DNAポリメラーゼとしてTaqポリメラーゼを精製し、これを用いたPCRの手法を1976年にサイエンス誌に発表した[6]T. aquaticusから単離されたDNAポリメラーゼは、90 °C (194 °F)超える高温で安定であり、DNA変性後も活性を維持する[48]ため、各サイクル後に新しいDNAポリメラーゼを追加する必要がなくなる[49]。これにより、PCR反応の簡便化と自動化への道が開かれ、幅広く応用可能な手法として発展することになった。

このように、PCR法の応用、発展に関してはシータス社グループ(当初はマリスも含む)の果たした役割が大きいのである。

ただし最初にこの方法を着想し方向性を示したのはキャリー・マリスであるので、マリスがノーベル化学賞を1993年に受賞した。PCR技術はマリスが特許を取得し、1983年にマリスが技術を発明したときに働いていたシータス社に譲渡された。Taqポリメラーゼ酵素も特許で保護されている。デュポンが提起した不成功の訴訟を含む、この技術に関連するいくつかの有名な訴訟が存在した。スイスの製薬会社エフ・ホフマン・ラ・ロシュは、1992年に特許権を購入したが、現在その特許権は失効している[50]

PCRの種類・応用法

Conventional PCR
1組のプライマーで反応を25〜35サイクル繰り返す通常のPCR[2]
Real-time polymerase chain reaction(Real-Time PCR、リアルタイムPCR
核酸断片を発光させて専用の光学機器を使って検出することによってリアルタイムに増幅曲線を描く方法。定性ではなく定量が必要な時に用いる。[2]
Reverse transcription polymerase chain reaction(RT-PCR、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応
逆転写酵素によりRNAをcDNAにしてからPCRを行う方法[2]
Nested polymerase chain reaction(Nested PCR)
PCRで増幅したPCR産物を改めて次の反応のテンプレートにして、別のプライマーペアを用いてもう一度PCRを繰り返す方法[2]
Multiplex polymerase chain reaction(Multiplex PCR、マルチプレックスPCR
複数の標的核酸(DNA)のそれぞれのPCR反応を1本の反応チューブ内で同時に行う方法[2]
Amplified fragment length polymorphism(AFLP)
標的核酸(DNA)を含むゲノムDNA等を制限酵素で切断し、その切断末端に短い2本鎖DNA(アダプター)を結合させ、その相補的なプライマーを用いてPCRを行う方法[2]
Loop-Mediated Isothermal Amplification(LAMP法
従来のPCRとはまったく異なる原理に基づく方法[2][51]

参考文献

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関連項目

外部リンク


 

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