「立山黒部世界ブランド化」というプロジェクトを皆様はご存知でしょうか。
簡単に言えば、2015年安倍内閣が打ち出した「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」を受け、富山県が進める、「立山黒部」を世界水準の「滞在型・体験型」山岳観光地にしよう」というものです。
2016年11月13日、2017年1月13日、3月27日と三度にわたり、「立山黒部」の保全と利用を考える検討会が開かれました。
検討会の主旨は以下の通り。
- 「立山黒部」は、日本でも類を見ない自然環境が存在する山岳地として、自然環境の保全活動が先進的に行われるとともに、利用の面においても国内外から多くの観光客が訪れる観光地としてその地位を確立してきた。
- しかし、訪日外国人の増加や個人旅行客の増加、北陸新幹線による首都圏とのアクセスの劇的な改善等、「立山黒部」を取り巻く環境は大きく変化している。このような変化を適切に把握し、柔軟かつ迅速に対応していくことが、これからも「選ばれる観光地」であるための条件である。
- 特に、「立山黒部」を世界遺産に登録する動きがあり、また、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて訪日外国人のさらなる増加が見込まれている。
- こうした国内外からさらに多くの観光客が訪れる日が来た場合、その観光客に満足していただける観光地となっているのかを今一度考える必要があるのではないか。
- そのため、日本はもとより、世界中の人々に「行ってみたい」と思ってもらえる観光地となるよう、「立山黒部」の現状を今一度把握し、「世界ブランド」としてさらなる高みを目指すための方策を検討することとしたい。
- なお、検討にあたっては、「立山黒部」は国立公園内に位置し、自然環境の豊かさが魅力の中心であることから、単に観光地としての開発のみを考えるのではなく、適切な自然環境の保全を行うことを前提に検討することとしたい。
この会議に関する詳しい内容は富山県のホームページに公開されている(一部は現在非公開)以下の資料をご参照ください。
- 「立山黒部」の保全と利用を考える検討会 第1回検討会資料
- 観光先進国を目指して(観光庁長官 田村明比古)
- 人と自然をつなぐエコツーリズム(森田委員 提出)
- 富山の河川を新観光資源に!(片山委員 提出)
- 第1回「『立山黒部』の保全と利用を考える検討会」委員名簿
- 第1回「『立山黒部』の保全と利用を考える検討会」配席図
- 第2回「立山黒部」の保全と利用を考える検討会 資料
- 第2回「立山黒部」の保全と利用を考える検討会 資料(別冊:プロジェクト詳細版)
- (参考資料) 中部山岳国立公園(保護規制区域)~立山黒部~
- 第2回「『立山黒部』の保全と利用を考える検討会」委員名簿
- 第2回「『立山黒部』の保全と利用を考える検討会」配席図
- 第3回「立山黒部」の保全と利用を考える検討会 資料
- (参考資料)今後のスケジュール
- 第3回「『立山黒部』の保全と利用を考える検討会」 委員名簿
- 第3回「『立山黒部』の保全と利用を考える検討会」 配席図
これらの検討会を経て、富山県は『立山黒部』世界ブランド化推進会議を設置。
平成29(2017年)年6月1日、東京にて第1回 「立山黒部」世界ブランド化推進会議が開かれました。
富山県は検討を進めるべき「28のプロジェクト」を掲げてます。
【上質な滞在環境の整備】
• 01 混雑スポットにおける食事・休憩スペースの拡充
• 02 アルペンルートの営業時間拡大
• 03 乗車整理券の配布
• 04 高原バス等のWEB予約システム
• 05 宿泊施設の整備
• 06 滞在プログラムの充実
【新しい魅力の発掘・磨き上げ】
• 07 アルペンルートの早期開業
• 08-09 冬季営業(アルペンルート、黒部峡谷鉄道 )
• 10 ヘリスキーの企画・実施
• 11 黒部ルート見学会の旅行商品化
• 12 カルデラ体験学習会の旅行商品化
【顧客層にあわせた受入環境の整備】
• 13 新しいマーケット(欧米豪)での認知度向上
• 14 多言語表記・案内の充実
• 15 携帯電話不通エリア、Wi-Fi未整備エリアの解消
• 16 ユニバーサルサービスの推進
【周遊性の確保】
• 17-19 ロープウェイの整備
• 20 宇奈月温泉街の賑わい創出
【自然環境の適正利用】
• 21 登山道の整備
• 22 環境意識の啓発
【自然環境の保全】
• 23 山岳トイレの整備
• 24 外来植物除去活動の推進
• 25 利用調整地区の導入の検討
• 26 環境保全経費の受益者負担の在り方の検討
【ライチョウの保全】
• 27 富山のライチョウサポート強化、生息状況調査
【利用者の安全確保】
• 28-1 雪崩事故対策
• 28-2 火山対策
この第一回「立山黒部」世界ブランド化推進会議では、立山山荘協同組合の佐伯千尋氏より、
・環境問題
・既存の事業者との住み分け問題
・安全性の問題などの指摘
関西電力勝田氏より「黒部ルート見学会の旅行商品化」について、
・安全面からのリスクなどの指摘
(株)ラティナ・インターナショナル代表取締役ダニエル・モンテベルデ氏より
・「高いクオリティーを求める外国人を求める」のではなく「バックパッカー」などをターゲットにするべきでは?
という意見、国際的な交通面からの指摘など、様々な問題点、プロジェクト企画の甘さが指摘されています。
これに対し、富山県の石井知事の対応は、淡々と話を進め、反対意見を述べる委員との温度差が感じられるものでした。
森トラスト(株)代表取締役社長 の伊達美和子氏も次のように指摘しています。
立山黒部世界ブランド化」のビジョンそのものが、どれもこれも、パーツパーツの話が多く何をしたいのか、何をするべきなのかが今ひとつはっきりしない。
このまま、勢いだけで開発が進められれば、取り返しのつかないことにならないだろうか、不安が込み上げてきます。
この後に行われるとされるワーキンググループの中でしっかりと様々な議論が重ねられていくことを願い、このプロジェクトの進捗は追っていきたいと思います。
この会議は、富山県のホームページに議事録が公開されていますので、是非ご一読ください。
PORTALFIELDでは、一連のプロジェクトについて複数回に分けてレポートしていきます。