2016下ノ廊下、水平歩道を歩く10月17日編-2 大太鼓→欅平

この記事は2016年10月に「Head for the mountains」に掲載したものを2019年1月にPORTALFIELDへ移設したものです。記事移設にあたり一部加筆修正を行っています。

PORTALFIELD高橋

 

2016下ノ廊下、水平歩道ルート。10/17阿曽原温泉小屋→欅平→富山編2

この日の行程:阿曽原温泉小屋→折尾谷砂防堤トンネル→志合谷トンネル→欅平→宇奈月→富山→東京

 

 

このページで紹介の区間:大太鼓→志合谷トンネル→蜆谷→欅平の地図

 

 

下ノ廊下で最長のトンネル、志合谷へ

高度感のある大太鼓を出発し、次のポイントになる志合谷に向かいます。この辺りも水平歩道は、ほぼ一定の高度を保っており、黒部川を挟んだ向かい側には奥鐘山の西壁を望みながら進んでいきます。ルートは山の形に合わせて通されているので、谷間に近づくと谷を挟んだ反対側の水平歩道が見え、それを繰り返しながら欅平へと向かっていきます。

 

 

大太鼓から歩くこと30分ほど、激しい水の音が聞こえてきました。やってきました、本日の滝行箇所その3。慣れって怖いもので、これだけ滝が続くと最初ほどの新鮮味は無くなってきますが、ここはここで流れの幅といい、水量といい、今日これまで見てきた滝と負けず劣らずなものです。こう続くと、なんか冷静に滝の規模とか観察してる自分がいました(笑)通過の様子はこちら(※音が出ます)

 

2016下ノ廊下、水平歩道10月17日滝行箇所3 from Koheii on Vimeo.

 

この日、3つ目の滝にして初めてほぼ濡れずに通過できました。雨が降ってるので、実際のところは滝で濡れても濡れなくてもあまり大差ないんですが(笑)ここは道幅が少し広いので、滝をよけながら通過できると思います。

 

志合谷の宿舎はどこに?

先ほどの滝行箇所3から間もなくすると、ガスが少し薄くなってきて志合谷を挟み、左手に対岸の水平歩道、右手に奥鐘山の岩壁が再び見えてきました。この写真の場所なんですが、あれっ、ひょっとして。

 

 

今回に限った話では無いですが、記事を書くにあたっては、撮ってきた写真や動画の撮影時刻GPSログを元に場所などをある程度特定した上で、自分の記憶を組み合わせて記事にしてるんですが、この写真を見て撮影場所を確認してみたところ、あることが思い出されました。

「10月16日編-5 S字峡→仙人谷ダム→阿曽原温泉小屋」編で仙人谷ダムを歩いた際にも、吉村昭の小説「高熱隧道」にまつわる内容を記事にしましたが、その際に出てくる軌道トンネルがあります。現在は関西電力黒部専用鉄道となってますが、この鉄道は水平歩道のある辺りの地下深くを直線的に通っています。地図を見てみると判るんですが、

 

 

ちょうどこの辺りの真下をトンネルが交差している感じです。ということは、お気づきになった方もいるかもしれませんが、黒部第三発電所建設の際に工事にあたる作業員の宿舎として建設されたものの、泡雪崩(ほうなだれ)で多数の犠牲者を出した志合谷宿舎跡、それが今歩いているルートの真下くらいにあるはずです。

その時の泡雪崩では鉄筋五階建ての宿舎の二階から五階までの部分が丸ごとその形のまま吹き飛ばされ、なんとそれは志合谷を越え、奥鐘山の岩壁に激突するという大惨事でした。

概要イメージとしては、先ほどの写真の足元側から目の前の斜面を飛び越え、奥に写ってる岩壁に当たったということになるのか思われます。このくだりは小説「高熱隧道」にも詳しく出てきます。

この先、志合谷のトンネルを越えて対岸側へ行けば、志合谷宿舎跡が見られるかもしれません。が、歩いてる時はその事を全く意識してなかったため、写真を撮ることはできませんでした。

 

 

志合谷が見えてきました。かなり深い谷で、今年は雪が少ないせいか見られませんでしたが、雪渓が残ることもあるようです。

 

 

この辺りもコの字型にえぐられた箇所を時折くぐるように歩いて行きます。写真で見ると近そうに見えますが、志合谷のトンネル入口までは先ほどの場所から10分ほど。思ったより距離があります。

 

志合谷に到着

 

 

この写真で見ると、奥の尾根の高さがそれ程でないこともあって何となく平和な写真に見えますが、写ってない水平歩道の下は断崖です。

 

 

8:00頃志合谷のトンネル入口にやってきました。

山と高原地図によると「150mのトンネル」「足元流水」「懐中電灯・防水対策必要」とのこと。

今回の下ノ廊下の山行で気になってた事の一つがこのトンネルだったんですよね。足元流水はいいとして、防水対策必要、これが何とも曖昧で。靴が浸水するような流れなのか、それとも単に濡れるだけなのか。靴を脱いで歩いた方がいいのかと、当初サンダルを持っていくことを本気で検討してました(笑)靴の上からビニール袋被せたらどうかな、とかいろいろ考えてたんですが、まあ、なるようになるかなと。特段の対策はせずに行きました。

 

 

ちなみにここ、広場のようになってる訳ではなく、道幅も特別広くないので靴を脱いでサンダルに履き替えたり、荷物を整えたりするには少し気を使うかもしれません。地図のポイントになってますが、休憩できるような雰囲気では無いです。

阿曽原から結構歩いてきましたが、欅平までも4.8kmは結構あるなあ、と。下ノ廊下は、旧日電歩道、水平歩道を通して、ポイントごとにこのような看板が2種類あります。一つは旧日電歩道でよく見られた明らかに古いタイプ、この写真のような新しいタイプは大太鼓からな感じです。それにしても、「ウォー太郎」って誰だろ?とずっと謎でした(笑)

 

ウォー太郎とは

 

 

(↑ウォー太郎サポーターズ倶楽部HPより引用)

 

黒部市のれっきとしたゆるキャラでした。この険しい水平歩道に現れる看板に、このゆるキャラの組み合わせが何とも言えない可笑しさがありました(笑)

 

志合谷トンネルへ

このトンネルは通過に4-5分程かかります。

 

 

トンネルを抜けました。中は完全に真っ暗なのでヘッデンや懐中電灯は必須です。

「足元流水」は確かにそうだったんですが、水量が増える場所からは道端に水が流れるようにしてあったので、トンネル内地面が全部水浸しという訳ではありませんでした。この日の雨でもこんな感じだったので、水濡れに関してはそれほど心配いらないかも、な印象でした。というか、ここに到るまでの間の雨と、沢に片足をドボンとしたことで靴の内部も既に濡れ始めていたので、あまり気にならなかっただけかもしれません(笑)

 

 

これは古いタイプの看板。ちょっとおどろおどろしい感じがしなくもないですが、これはこれで味があって結構いいです。

 

トンネルを抜けたその先に

 

 

トンネルを出たところで、歩いてきた道を振り返り。

 

 

引き続きこういう道が続きますが、この辺りまで来るといつ終わっちゃうんだろう、と少し寂しさにも似た感情が。

 

 

右奥は黒部川上流方向。まさにV字谷。

 

 

もう少し紅葉したら綺麗だろうなあ。この翌週ぐらいが見頃だったようです。

 

 

足元が少し広くなってくるのに加えて、道端には草木が生えてるので、怖さというか高度感も和らいできます。

 

 

この水平歩道を建設するのにどれぐらいの労力が使われたのか、改めて想いを馳せます。

歩いてる時には気が付きませんでしたが、上部に送電線の鉄塔が少し見えてきました。少しずつ欅平に近づいてる実感が湧いてきます。

 

 

突如現れるこの岩、パッと見て連想したのは、北アルプス燕岳にあるイルカの形した例の岩。なんとなくそんな雰囲気あるような。それにしてもこれ、やっぱり道幅にあわせて岩が削られたのでしょうか。自然のものにしてはスパッとしすぎな感じもします。水平歩道のことを考えると、この岩を削るくらいは容易にやってしまうのかな。

 

志合谷宿舎跡発見

そこから歩くこと数分、先ほど志合谷のトンネル手前のところで、泡雪崩にやられた志合谷宿舎の話をしましたが、この辺りがちょうど対岸側になります。後日調べて判ったことですが、どうやら志合谷宿舎跡が見えるポイントがあるようです。これも歩いてる時は全く気が付かなかった、というか気が付きようが無かったんですが、たまたま撮影していた動画カメラに写っていました。

まず、その宿舎はどんなものなのかですが、いろいろな方が撮影に成功しています。朝日新聞のデジタル版でも「1938年、泡雪崩に襲われ、志合谷の谷底に残る作業員宿舎跡」として取り上げられたこともありました。ここはもともと鉄筋五階建ての宿舎で、今見えてるのはその一階と二階のつなぎ目の部分です。

で、たまたま動画カメラに写ってた映像から切り出した画像はこちら。

 

 

水平歩道よりかなり下の方にあるようです。建設にあたっては、

 

植物生育状況、地形、積雪量、冬期間の風向状態等、専門家の意見や文献を参考にした

吉村昭「高熱隧道」より引用

とのこと。雪崩の発生確率が最も低いであろう場所ということで選定されたようですが、後ろには山壁がそびえる険しい場所だったことが判ります。宿舎があったのは知っていましたが、このような形で未だに残っているとは思いませんでした。

 

 

これが奥鐘山の西壁です。吹き飛ばされた宿舎の二階から五階の部分は、先ほどの場所から谷を越えてこの岩壁へ衝突。小説の文章も迫力があるのでその様子を思い浮かべさせてくれますが、実際に見てみると岩壁の圧倒的な存在感が眼前に迫ってきます。

 

 

水平歩道がある側も完全に岩山です。岩の亀裂から木々が生えているさまは、一種独特の光景です。この写真の右手に写ってるのが奥鐘山の岩壁です。

 

蜆谷に到着

 

 

志合谷のトンネルを抜けて歩くこと40分ほど、8:55頃蜆谷(じじみだに)に到着。ここは山と高原地図のポイントにはなっていないので、この時点でコースタイムより早いのか、遅れているのかは分かりにくいですが、体感的にはいいペースで来られてる感。

欅平まであと一息な距離になってきたので、このまま進みます。

 

 

鉄塔が見えてきました。いくつかのブログで「鉄塔が見えると欅平への下りが始まる」みたいな記載を見た記憶があるので、もうそんなところまで来たのかと時計を見ると、まだ9時です。いい感じのペースで歩いて来られてきているとはいえ、何となく早すぎるような?

この辺り、道の感じも岩山をくり抜いた水平歩道、ってよりは足元も土の部分が増えて雰囲気は普通の山道になってきていたので、そろそろなのかなと思いきや、

 

 

まだまだ普通に水平歩道っぽい道が始まったりします(笑)それでも、送電線が見えてきたりして、下界が近いのが肌で感じられてきます。

 

いよいよ欅平の文字が!

 

 

欅平上部に到着。ついに「欅平」の文字が付いた地点までやってきました。黒部ダム駅まで28.9km、やっぱりずいぶん歩いてきたなあと。欅平駅まではあと1.3km、もう一息です。

 

 

このそばから、また別の鉄塔が見えます。この鉄塔こそ、欅平への下りに変わる所にあるもので間違いないでしょう。水平歩道ともいよいよお別れです。

鉄塔からは樹林帯の急斜面をどんどん下っていきます。水平歩道の高度から谷底の欅平まで短い距離で一気に下るので、結構足にきます。最後にここで転んで怪我したとかじゃ笑い話にもならないので、はやる足を抑えながらも、それでも、ここまで来るとやっぱり若干足早に(笑)

 

 

山と高原地図のポイントにもなっている、猿飛峡回遊歩道の分岐までやってきました。

 

 

ここから先は、上級者向けの登山道です。」しつこいくらいにそこら中に貼られてて、なんとなく苦笑(笑)黒部ダム駅側からの歩き出しにはこのような看板は無いのが対照的です。

ここから先も山道の下りは続きますが、一気に歩きやすくなり、途中には整備された階段なども出てきます。先ほど以上に最後にここで転んで怪我したとかじゃそれこそ笑い話にもならないので(笑)注意深く下りました。

 

 

黒部川上流方向の風景もこの辺りで見納めです。

 

ついに欅平駅到着!

 

 

水平歩道、旧日電歩道からなる下ノ廊下へ至る、欅平の登山口に下りてきました。

 

 

10:10頃、ついに最終目的地の欅平駅に無事到着!

 

阿曽原温泉小屋を出たのが5時過ぎだったので、コースタイムより若干早いくらいのいいペースで歩いてこられました。雨だったことを考えると上出来です。

途中から先を歩かれてたあのお二人連れの方とも再会。お疲れさまでした!

「10月17日編-3 欅平→宇奈月→富山」へ続きます。

前の記事「10月17日編-1 阿曽原温泉小屋→大太鼓」はこちら。

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