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立山黒部世界ブランド化プロジェクトを追う④【1月26日最新】黒部ルートの一般開放へ向け、案内ガイド養成と愛称検討


写真:黒部ルート一帯の魅力向上策などを検討した会合=県民会館

黒部ルートにガイド養成 県2020年度 一般開放へ愛称検討

県は2020年度、関西電力黒部ルートの愛称の検討や案内ガイド養成に乗り出す。26日に県民会館で開かれ… このままもっと読む

 北日本新聞

 

PORTALFIELD編集部追記

<これまでの経緯>

黒部ルートは、欅平から黒部ダムまでをトロッコ電車などで結ぶ工事用輸送路で、その距離は18キロ。区間のほとんどがトンネルです。

黒部峡谷鉄道の欅平駅を起点として、黒部峡谷鉄道の工事用線(下部専用鉄道)、関西電力黒部専用鉄道(上部専用鉄道)、インクライン(ケーブルカー)、専用地下道バスを乗り継ぎ、黒部ダムに至ります。

関電は1996年から平日限定で無料の「見学会」を実施しており、抽選で選ばれた約2000名(年間)がこのルートを訪れていました。

富山県は平成28年度に「立山黒部の世界ブランド化に向けた28のプロジェクト」の1つとして 「黒部ルート見学会の旅行商品化プロジェクト」を提案し、「『立山黒部』の保全と利用を考える検討会」が設置されました。

このルートの一般開放は、これ以前にも何度も検討されてきましたが、鉄道事業として運営するには上部専用鉄道部分が狭く、トンネル幅の基準を満たしていないことや、設備の貧弱さが障害となり実現には至らなかったという経緯があります。

第1回「立山黒部」世界ブランド化推進会議(2017年6月1日)では、関西電力の勝田達規取締役常務執行役員により、現状施設での一般公開は大変危険だという指摘がありました。詳しい内容は、富山県のホームページ第1回「『立山黒部』世界ブランド化推進会議」議事録」を読むことができます。

関西電力は、第3回 「『立山黒部』世界ブランド化推進会議ワーキンググループ(2017年10月11日)」において、安全対策案を提出します。

しかし、この安全対策を施したとしても、先述の通り、トンネル幅の問題があり、上部専用鉄道の鉄道事業化はできません。

第2回「立山黒部」世界ブランド化推進会議で、旅行商品化にあたっては、

「黒部ルート区間は無料見学会の体裁を維持する」という条件の下で行われるものであれば、鉄道事業の許可は必要ない

と判断され、2018年10月18日、設備を所有する関西電力と富山県が協定を結び、「黒部ルート」が一般開放されることが正式に決まりました。

 

PORTALFIELD編集部では、2016年に「下ノ廊下」を歩いた際にこの立山ルートの一部にあたる仙人谷ダムのトンネル内で上部専用鉄道とつながる軌道を見てきました。その時の様子は「2016下ノ廊下、旧日電歩道を歩く10月16日編-5 S字峡→仙人谷ダム→阿曽原温泉小屋」から読めます。

現在でも、坑内はカメラがすぐに曇ってしまうほどの熱気が充満し、硫黄臭が漂っています。

上部専用鉄道は昭和14年に黒部川第三発電所建設のため作られたものですが、岩盤温度が高く高熱地帯になっていることから工事は難航を極めました。吉村昭の小説「高熱隧道」には、その様子がリアルに描かれています。

このような場所にたくさんの旅行者が訪れるようになるというのは、現状を見る限りでは安全面をいかに確保できるのか、若干の不安を感じているのが正直な感想です。

旅行者にとっては、黒部ルートの一般開放によって、抽選制で平日に限られていた見学会よりも行ける機会が増えるとはいえ、その定員は最大でも1万人程度と、現在の見学会の5倍程度になるに過ぎません。

第2回「立山黒部」世界ブランド化推進会議の資料での旅行商品化案によると、2泊3日のルートで75,000円(交通費・宿泊費含む)とあり、高額商品になることが予想されます。費用的には必ずしも手軽に行けるとは言えないレベルではありますが、今回募集された黒部ルートの愛称がどうなるかなどは楽しみですね。

PORTALFIELD編集部としては、立山黒部の美しさを世界中の人に知っていただきたい一方で、無理のあるプロジェクトが進められていないか、これまでも「立山黒部世界ブランド化」の行方に注目し、プロジェクトの進捗状況や様々な方の意見などを発信してきました。

この地を訪れた旅行者が心に残る旅が安全にできるよう、しっかりとした準備が今後とも進められることを願います。

この機会にぜひ、こちらの記事も併せてお読みください。

「立山黒部世界ブランド化について」

立山黒部世界ブランド化プロジェクトを追う①「立山黒部世界ブランド化」とは?
立山黒部世界ブランド化プロジェクトを追う②「山で生きる男たちから待ったの声」− 阿曽原温泉小屋・佐々木泉さんが意見書を提出
立山黒部世界ブランド化プロジェクトを追う③ 様々な立場から〜「立山黒部」世界ブランド化のために立山町ができることは
「立山黒部世界ブランド化」の「陰」に追ったドキュメンタリー番組「沈黙の山」がギャラクシー賞を受賞

「2016下ノ廊下、旧日電歩道・水平歩道を歩く」

10月15日編 扇沢→黒部ダム→ロッジくろよん
10月16日編-1 ロッジくろよん→内蔵助谷出合
10月16日編-2 内蔵助谷出合→別山谷出合
10月16日編-3 別山谷出合→十字峡
10月16日編-4 十字峡→S字峡
10月16日編-5 S字峡→仙人谷ダム→阿曽原温泉小屋
10月17日編-1 阿曽原温泉小屋→大太鼓
10月17日編-2 大太鼓→欅平
10月17日編-3 欅平→宇奈月→富山

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配信者 PORTALFIELD浜崎

登山、ランニング、そして、タップダンスを楽しんでいます。

これまで最も記憶に残っている山行きは、下ノ廊下、そして、早月尾根から剣岳そして室堂への「劔越え」です。

ずっと学んでいるタップダンスは、舞台「クレイジーフォー・ユー」を観た翌日から始めました(笑)

どうぞ、よろしくお願いします。

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